汽車に飛び乗って
「梢、そろそろ起きるさー。」
「……無理ぃ…。」
「無理じゃなくて、起きんの!」
「じゃあ、…あと30分…。」
「それ30分前にも言ったさ…。」

そうです。寝起きの悪さは天下一品なんですよ私


「あはっ。ゴメンねラビ。」
「と思うんなら急ぐさ!もう昼の汽車出るっての!」

只今、町中激走中。ギャーギャー騒ぎながら走る異色な2人は、明らかに町の人たちの視線を一身に受けているわけで。あぁ、視線が痛い…

「あぁーっ!ちょっと待つさぁーっ!!」
「いやいや、お前も待てってのー!!」

ガタンガタンと走り出す汽車に、更にスピードを上げるラビ。てかこういうのって普通、ラビは女の子である私の手を引いて走るもんじゃないの!?それなのに何故、アイツは我先にと私を置いて汽車に乗り込んでるんだ。あんた一緒に教団に行くって約束したよね!?……あ、もしかしてこれって私、女の子扱いされてないだけ?

「とりあえずセーフさね。ギリギリ乗れたな。」
「ほ、…本当に、ギリギリね…。」

ゼェゼェ息を切らす私とは逆に、既に平然としているラビ。漸く乗り込んだ時には、もう汽車は一定のスピードを保ちガタンガタンと町から滑り出していた。てか、この速さでよく乗れたな私…だんだんと小さくなっていく町を背に私は、 勿論ラビの足を踏んづけるのは、忘れなかった


「ねぇ、ラビ。此処から教団までってどれくらいかかるの?」
「だいたい3時間くらいさね。」
「結構近いんだ。」

それから私たちは車掌さんに案内されたコンパーメントに向かい合わせで乗り込んだ。何だか、それがまたホグワーツ特急に雰囲気が似ていて、ジェームズやシリウスたちと騒いでいた日々を懐かしませた


「あ、このカボチャケーキ美味しい!」
「あ、てめっ梢、俺のも残しとけよ!」
「とか言いながら、シリウスいつもそんなに食べないじゃない。」
「お前が異常に食い過ぎなんだろ。」
「何ですって!?」
「まぁまぁ、落ち着きなって梢。あながちシリウスの言うことは間違ってはいないから。」
「ジェームズ!!」
「ちょ、こんなとこで杖を出さないでよ梢!リーマスどうにかしてー!」
「はは、大丈夫さピーター。いつものことだから。」



その後、ちょっとだけ…いや、かなり崩壊したコンパートメントのせいで、先生や駅員さんたちにこってりと怒られてしまったんだよね。皆に会いたいな…

「……………、」

あ、不覚にも何だか泣きそうだ。私はそんな顔をラビには見られたくなくて、不自然に思われない様に下を向いた

ポンポン

だけどそんなことはお見通しとばかりに、ラビは私の頭を軽く撫でてくる。そんなことをされたら余計、泣いてしまいそうになるじゃないか!なんて口が裂けても言えないけど。確信犯かそうでないのか、ちらりと覗き見たラビの顔には笑みが浮かんでいた。だけど、それは楽しんでるものじゃなくて酷く優しいものだったから、私は黙って頭を撫でられていた


汽車に飛び乗って
(あ、そっか本当は不器用な人だったんだね )
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