立派な軍人になる為には、女なんて要らない、必要ないと思っていた。まわりに沢山の女を侍らせてへらへら笑ってるあいつは馬鹿以外のなにものでもない。俺は日々真面目に、脇目もふらず勉強と特訓に励んでいる、つもりだった。名字名前に恋をしてしまうまでは。

名字名前は、隣のクラスの女子で、別にずば抜けて可愛いというわけではないが、まあ、俺から見るかぎりはとても可愛い。大きな目に、よく笑う口、淑やかな仕草、優しい性格。軍人に向いてるかどうかは置いておいて、彼女はとても魅力的な女であった。

「はあ……」

最近ため息が増えた、と、この前バダップに言われた。確かにその通りだ。いつの間にやら、どうしようもないくらいに名字名前のことが好きになってしまっている。隣のクラスなので、大した接点はないし、向こうは俺のことなんてなんとも思っちゃいないはずだ。告白しようという恐ろしい考えは抱いたことがない、何せ結果は目に見えている。何度か貴女の姿を目にしただけで惚れてしまいました、なんて言えるわけがなかった。

「どしたのエスカバ。悩み事?」

椅子に座って頭を抱えていた俺に声をかけてきたのは、よりによってミストレであった。同じチームオーガのメンバーではあるが、底の知れないこいつが俺はどうも好きになれないでいる。

「別に。何でもねぇよ」
「ふーん、……恋煩い?」

思わずバッと顔をあげると、にやにや笑いながら 「当ったりー」 と言われた。自己嫌悪で死んでしまいそうだ。

「エスカバ、カタそうなのに意外だね。で、誰」
「……るせぇな、関係ないだろ」
「え〜、せっかく応援してあげようと思ったのに」
「いらねーよ」

こんなやつに打ち明けたらどうなるかわかったもんじゃない。この気持ちは誰も知らなくていい、どうせ実ることのないなのだ。


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