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目を覚ますと鼻と鼻が触れ合いそうな距離にエレンの顔があった。
肌つるつるだなまつげ長いなと気持ち良さそうに眠る少年の顔をぼーっと眺めているとだんだんと私の意識もはっきりしてくる。エレンが私の家を訪ねてくるときは大抵ミカサが一緒なので、彼1人で来るのは珍しい。
両親も出かけているらしく物音のしない部屋に、いつもより寝過ぎちゃったなあと思い腰を上げるとその振動で目を覚ましたのかエレンが気だるそうにごろんと仰向けになった。

「ごめん、起こしちゃった?」

「んー…」

まだ眠そうにしているエレンの様子をベッドに座りながら見ているとそれに気づいたのかエレンは私がいるほうとは反対側に顔を向けてしまった。それにしてもなぜエレンは私の隣で寝ていたのだろうか。まあいいけど。
また眠ってしまいそうなエレンの髪の毛を触ってみるとぴくっと目を閉じたまま反応した。意外とふわふわしている髪の毛が気持ちよくてそのまま撫でていた。

「エレンどうしたのー」

「べつに、暇だからナマエのとこに来ただけ」

「めずらしいじゃん」

「アルミンとはよく2人で遊んでるだろ」

むっとした顔になったエレンがこっちを向いた。アルミンは2人より先に仲良くなったのもあって、私は何かというとまずアルミンの所へ行ってしまう。ちょっとしたやきもちを焼いているのだろうエレンが可愛くてじゃあ今日は2人で遊ぼーと言って私も寝転がった。

「そう思って来たのにナマエ起きるの遅すぎ」

喜ぶかと思ったらますますむすっとしたエレンは「せっかくミカサが見てない間にナマエの家に来れたのに」とぶつぶつ言っている。それはミカサが心配しているんじゃないだろうか。エレンと2人でいるっていうのがばれたら怒られるかもなあ、ミカサに投げ飛ばされたりしたらもう立ち直れないぞと怯えている私はとても年上の立場とは思えない。
隣から漂う不機嫌オーラにはっとして、いや今はミカサよりエレンの機嫌を直すほうが先だと判断した。

「ごめんねエレン、次はもっと早く起きるからね」いいこいいこと頭を撫でてあげるもエレンの機嫌は直らない。アルミンが拗ねた時はこれですぐ許してくれるのに、前にエレンのお母さんと会った時に聞かされたように彼はなかなかの頑固者だ。せっかく早起きしたのにとかまだぶつぶつ言っている。

「もうお昼過ぎてるし、ナマエいつまで寝てるんだよ」

「今からでもいっぱい遊べるよ」

「ミカサもアルミンも、もうすぐナマエの家に来ちゃうだろ」

エレンの、私を一向に許さない雰囲気と言い返せない自分の情けなさに悲しくなってきて思わずううう…と両手で顔を覆う。ぴたりと私を責める言葉が止んで、こちらに向く視線を感じた。

「な、泣いてるのか?ナマエ」

「……。うん」

ちょっと落ち込んだだけで本当は全く泣いてなんかいなかったのだが悪戯心が働いてそう頷いてみる。途端にエレンはさっきとは打って変わっておろおろし出した。
その変わりように込み上げてくる笑いをこらえながら、この辺にしておこうと思いつつもも「エレンが慰めてくれたら泣き止む」と口が動いた。ちょっと声が震えてしまったのでリアリティが増したかもしれない。

黙ってしまったエレンに、困らせちゃったかなと罪悪感が沸いてきて様子を見ようと顔から手をずらそうとすると、仰向けに寝転がっている私の上に何かが乗ってきた。びっくりしていると私の上にかかった重さはそのまま、遠慮がちに頭を撫でられるのを感じた。


「って泣いてねえじゃねーか!」

涙の流れてない顔を見るとまたしてもエレンは不機嫌になってしまった。
ふふと笑いながらエレンを見ると間近で目があった事が恥ずかしかったのか顔を赤くして私から離れようとしたので、ぎゅっとエレンの腰辺りに抱きついてそれを阻止した。

「悲しかったのは本当だよ」

「…俺がナマエに文句ばっかり言ったから?」

「エレンが今日ずっと怒った顔してるから」

悲しかったよーとエレンをじっと見つめると今度は離れようとはせずに私を見つめ返す。ごめん、と小さい声が聞こえたので私もごめんねと謝ると、エレンはやっと笑ってくれた。


「でもさあ、起こしてくれれば良かったのに」

「ナマエの寝てる顔がかわいくて、見てたらつられて寝ちゃったんだよ」

目を逸らしながら、もごもご話すエレンにおまえが可愛いすぎてどうしてくれようかと思いながらもとりあえず頭をなでなでしていると、私の上で撫でられるがままになっているエレンはまた眠りそうになっていた。「冒険しに行こうか」と声をかけると気のない返事が聞こえるも、立ち上がる気配はない。ちょうど胸の辺りに顔をのせているのはわざとなのか分からないが気にしないでおこう。


私もエレンもそのままの体勢でまた寝てしまって、私は夢の中で巨人のいない外の世界をエレンと冒険していた。発見したとてつもなく大きな湖を2人ではしゃぎながら泳いでいる。水をなめてみたらなぜかしょっぱかった。

数分後、その光景を見て無言で怒っているミカサと半泣きになってショックを受けているアルミンに叩き起こされたのはまた別の話である。


140109 たまにはいいでしょ

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