ハモリエヴリデイ | ナノ


「腹痛いんですか?」

「そ、そうなの」

いたた、と大げさにお腹を抱えるとエレンくんはそんな私を見て不思議そうに首を傾げた。今日は久々の休みだったので少し離れた森へとのんびりお散歩に行き、お昼寝をするという優雅な1日を過ごしたのだが、私はそこで運命の出会いをしてしまったのだ。
旧調査兵団本部に戻ってくるなりこそこそしている私を通りすがりのエレンくんは怪しんでいた。且つ私が隠しているお腹の辺りから生き物の鳴き声まで聞こえたので、ますます怪しんで私をじいっと見るのだった。

「ナマエさん、何か隠してませんか?」

「私がエレンくんに隠し事なんてするわけないでしょ?」

「前リヴァイ兵長と一緒に内地に行ってたじゃないですか。どうして俺に内緒にしてたんですかデートだったんですか?」

「そんな恐れ多い事できる訳ないじゃないの。お土産買って来たんだから許してよエレンくん」

「あんな土産要りませんよ」

つい先日、削がれたい男ナンバーワンと巷で噂のリヴァイ兵長に誘われ内地へ行ったのだが、何をするわけでもない。ただ無言で街を歩いただけだった。何故私を誘ったのかは不明である。うす汚れた目をしている貴族達が話しているお金の話だとか自慢話だとかが耳に入るとさらにうす汚れた目をしているリヴァイ兵長が掃き溜めの塵を見るような目で睨みをきかせるので、私は隣でびくびく怯えていた。その際にノリでリヴァイ班の皆にグロテスクな巨人のマスコットがついたキーホルダーを買って帰ったのだが、エレンくんはそれを見た瞬間全てをグーパンチで粉砕し、駆逐してしまわれた。「どうせなら食い物買ってこい、ナマエよ」とオルオに言われたけど口調と顔がうざかったので無視しておいた。

とまあ今の私はそんな回想をしている場合ではなく、もぞもぞと動く服の中にいるものを隠すのに必死なわけです。どうやってエレンくんを撒こうか、じりじりと近づく距離を測りながら考えているとさらにタイミングが悪い事にこちらへ向かってくるリヴァイ兵長がエレンくんの後ろに見えた。ここは廊下なので人が通るのが当たり前でありこんな所で立ち止まっている私達が異常な訳なのだが。リヴァイ兵長は邪魔だ、と一瞥すると「フゴッ」と聞こえた奇妙な音に立ち止まって私達を見た。

「ナマエさんが何か隠してるんです、兵長」

遠慮がちにそう抗議したエレンくん。それを聞くと私の目の前で立ち止まり、私が両手で覆っているやけに膨らんだお腹を鋭い目で見て、躊躇する事なくそれを引っぺがした。勢いよく服の裾をめくられたもんだから私のお腹から下着まで丸見えだ。15歳真っ盛りのエレンくんはそれを凝視している。ちなみに今日はベージュの何とも言えない下着をつけている。というかいつもこんなようなものだ。だって見せる相手がいないのだから…。
「安心しろ、俺は下着には興味ない」と俯いている私を見て検討違いのフォローをする兵長。あ、そうですか…と反応に困っていると彼は私がまだ抱えているものに目線をやった。ブゥと潤んだ瞳で見つめるそれと目が合うと、リヴァイ兵長はかすかにふっと優しく微笑む。

「よくやった、ナマエよ。」

そう私が今まで隠していたのはブタである。ブタといっても私が着ているブラウスの中に隠せるくらいの小さなぬいぐるみサイズ。ミニブタだ。何故か褒められたので、唖然としているとそんな私にお構い無しで、ミニブタの首根っこをひょいと掴みスタスタと歩いて行ってしまった。どうするのか聞くと調理場に持って行くと言うので慌てて引き止める。

「兵長!私食べようと思ってその子を連れて帰ったんじゃないです!」

「あ?」

どすの利いた声でこちらを向いたので体が跳ねた。リヴァイ兵長の手中にいるミニブタもふるふると体を震わせている。私が助けてあげなければ。

「その子、きっと家族と逸れちゃったんですよ。森で寝ていて、起きたら隣にいたんです。体だってブタにしてはかなり小さいし、きっと何日も食べてないんですよ…」

涙ながらにそう伝えるとエレンくんは心を打たれたようだった。助けてあげましょうよ兵長、と一緒になって必死に説得をしてくれる。そんな私達を見てここは部下思いの兵長。はあと一息つくとエルヴィンに聞いてみると言ってくれた。

「ただし、世話するならてめえでやれ。俺は一切関与しない」

「もちろんです。ありがとうございます」

頭をわしゃわしゃ撫でられミニブタを手渡される。ありがとう兵長。惚れそうだ。あ、やっぱ嘘です。すいません。

「俺には礼はないんですか」

「あ、ありがとうエレンくん…」

エレンくんは最近私に対して態度がでかくなりつつある。リヴァイ兵長に言って躾けてもらわなければ。


140206

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