のこのバレンタイン

ガチャ
「あれ…みんなは?」
後ろにチョコレートの箱を隠し持ちながら、リビングに入った。
「あ、のこ。みんないきなり頭が痛くなったようだ。流行り病でなければよいが…。みんな病院に行った」
ライアはソファに座っていた。
『ありがたいけど…嘘つくならもっと上手く嘘つきなさいよ……!!』
のこはもじもじしながら、ライアの向かい側のソファに座った。
「…どうした?」
『あんだけさっきまでバレンタインバレンタインって騒いでたのに気付かないって…どんだけなのよ…』
「えっ…と。これ……作ったの…!もらって…くれるかな…」
のこが、俯きながら、ライアに箱を差し出した。
箱はピンクの包装紙でラッピングされ、赤と茶色の紙ヒモでリボン結びされている。やたらとあちこちにハートのシールも貼ってある。
のこの鼓動はすでに壊れそうなぐらい速くなっている。
ライアはどんな顔をしているんだろう。
はやく、はやく受け取ってよ!
耐え切れずに、少しだけ顔をあげて、ライアを見た。
水色の前髪から少しだけ見えるライアの顔は、びっくりするぐらい近くにあった。
「うぇっ!?」
あまりの驚きに、差し出した手を引っ込めて、ソファに倒れた。
「ど…ど…どうしたの!?」
体勢を整えながら、動揺丸出しの声で言った。
「ふ…。鼻に、チョコレートが付いている」
ライアは珍しく、可笑しそうに笑っていた。
「え、えぇ!?う、うそ!?」
のこの動揺はまたさらに大きくなった。
拭おうとするが、どこについてるか分からない。
「ここだ」
ライアがのこの目の前に来た。
そして、顔を近付けた。
―嘘っ!?―
のこはもう真っ白になって、とりあえず目をぎゅっと閉じた。
冷たい指が、鼻に触れた。
火が出そうなぐらい熱い自分の顔とは対照的に、この人は生きているのだろうかと思ってしまうほど、冷たい指だった。
「…取れた」
ゆっくり目を開けると、のこの向かい側のソファに座って、取れたチョコレートを指ごとぱくりとくわえるライアがいた。
『どこの少女マンガよ…』
「…美味い」
ライアは素直に感想をもらした。
『あんだけ人の鼓動壊しておいて、何事もなかったかのようにするなんて、卑怯じゃない…』
のこは恨めしげにライアを見た。

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