セピアのバレンタイン

コンコン
家のドアが叩かれる音がした。
「ディオンが来たのー!」
セピアが、先程作って可愛らしく包装したチョコレートの箱を胸に抱いて、玄関へと駆けた。
勢いあまって一度ドアにぶつかってから、勢いよくドアを開けると
「ディオンー!!!」
セピアの大好きなディオンが立っていた。
セピアはチョコレートの箱を放り投げて抱き着いた。
「あ、セピア…!」
ディオンが抱き着かれてよろめきながら、宙に浮いたチョコレートの箱をキャッチした。
「会いたかったのーっ…」
セピアがディオンに抱き着きながら言った。
「私も…会いたかったよ」
ディオンがセピアの頭を撫でる。それが落ち着くらしくて、セピアは少しの間抱き着いたままでいた。
そして、どちらともなく離れたとき
「セピア、これは、私に?」
ディオンがさっきキャッチした、少し包装の崩れたチョコレートの箱をセピアの顔の前に出した。
「あっ…!ぐちゃぐちゃに…なっちゃったの…」
目の前にある箱は、逆さまだった。
「私に、くれるんだよね?」
セピアの悲しそうな表情とは反対に、ディオンは悪戯っぽいような、嬉しそうな、そしてお兄さんのような笑顔でそう言った。
「そう!ディオンにね、一生懸命作ったのー!でもねでもね…!セピア、ディオンに会えたのがあんまりにも嬉しくて…投げちゃったのー…」
セピアが俯いて、ディオンの服をぎゅっと掴んだ。
「私は、そんなこと気にしないよ。セピアが一生懸命作ってくれたんだ。それ以上に嬉しいことなんてないよ」
ディオンが、自分の服を掴む小さな手を、優しく握った。
「ディオン…!大好き…!」
セピアは嬉しくなって、またぎゅっと抱き着いた。
「く、苦しいよセピア…!ねぇねぇ、これ、食べていい?」
「もちろんなのー!」


甘い甘い恋が一つ。

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