嫌いなやつ
校門から出てすぐだった。
「げっ」
「……」
一番会いたくないやつ、天才@と遭遇。そのまま抵抗むなしく捕まった。委員会で岩ちゃんは不在、学校前で悪目立ちする動きもしたくない。俺一人でどうにかなる話ではなかった。そのまま、ウシワカの家へ連行された。ちなみにこれ、6回目。初めてのときは驚きからまったく動けなかったが、さすがに回を重ねれば馴れてくる。もっとも馴れたとしても、何も出来ないのは変わらない。こいつがこうして現れたと言うことは、今日は覚悟しなければないらしい。もちろん、不本意だけど。

「……明日部活なんですけど、どうしてくれんの」
ウシワカ宅に連れ込まれて数時間。鬱血痕と倦怠感が残る身体に顔をしかめながらワイシャツに腕を通す。ウシワカはしれっとしながらスポーツドリンクを傾けていた。投げ渡されたボトルを胸の前で受けとる。
「着替えのとき気を付ければ問題ないだろう。身体の怠さも、すぐおさまる」
口を拭うようすが様になっていて余計に腹が立つ。ペットボトルの飲み口の縁をシーツで拭ってから、口に含む。乾いた喉に、馴染んだ味が染みる。
ウシワカの言葉通り、普段から部活にいそしんでいるため、ちょっとやそっとじゃ身体の疲れは残らないし、ウシワカに付けられた痕はすべて、Tシャツかハーフパンツで隠れる位置にある。ただしそのせいで、ウシワかは非常に際どい箇所に何度も吸い付いたわけなのですが。
「まったく。毎回これが最後だって言ってんじゃん。俺はお前のこと好きじゃないし、岩ちゃんもいるし、何回もヤりたくないんですけど」
「岩泉は恋人ではないんだろう」
「……そうですけども」
ペットボトルを額に軽くあてながらぶつぶつと不満を漏らす。もちろんウシワカは聞く耳を持たない。ベッドに腰掛けたウシワカから距離をおこうと、ベッドの端へと移動する。手近にあった枕を取り、膝を抱える。枕からは、隣に座るウシワカの匂いがした。眉間にシワが寄る。
「……お前ぐらいだったら女の子捕まえ放題だろ。なんでわざわざ俺んとこ来んのさ」
枕を元の位置に戻して、膝に顎をのせる。ウシワカは聞いてるのか聞いていないのか分からない。いつもそうだ、こいつはよくわからない。
突然ウシワカの手が俺の髪に触れる。ぱしんと払おうとすれば手をとられ、そのまま甲にキスをされた。思わず顔を背ける。なんでこいつはこういうことを平気でやるんだか。俺だってちょっと緊張するのに。
「何度も言っているだろう、お前だからだ」
薄く笑みを浮かべるウシワカの手を振り払う。その勢いのままペットボトルを投げたが、ウシワカは軽く受け止めてしまった。小さく舌打ちしても、気にした様子はない。
ウシワカは手にしたペットボトルの中身を飲み干してから、また俺の方を見た。
「……さっきせがむように手を伸ばしたやつと同じとは思えないな、及川」
「な……!」
思わず熱くなる顔を誤魔化すように拳をおりおろす。しかし、何度やってもすべて防がれてしまう。そのまま手首を抑えられ、ベッドに再び押し倒された。
「俺はお前なんか嫌いだから!その澄まし顔、岩ちゃんとぶっ潰してやる!」
「期待しておこう」
余裕綽々というように笑う顔に苛立ち、思いきり舌を向けた。かっこいいなんて、ちょっとだけ思ってるけど、絶対に言ってやらない。

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bkm

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