ナツのユキ


▼ 出発/決心

 あれから数日が過ぎた。ティリスの迷子案件(?)も無事解決させ、アグレイとスノウが「街」を発つ時がやって来た。
「また、いつでも来て下さい。本当に、お世話になりました」
 ティリスと、彼女の母親とが街の出入り口へ見送りに来ていた。スノウが照れたような表情をする。
「うん。また、必ず来る」
「またな」
 街の外へと繰り出すふたりに、ティリスと母親とが大きく手を振る。
(また……か)
 同じく大きく手を振り返すスノウを見ながら、アグレイは胸中でぽつりと呟く。



 旅を再開し、スノウと並んで歩いていると、彼女は唐突に言葉を発した。
「アグレイが街の宿で聞かせてくれた、魔物の件。神は勝手」
「そうだな」
「あれから、色々考えた。魔物のこと、アグレイのこと」
 その言葉に、アグレイはぱちくりと瞬きをする。
「……俺?」
 スノウは迷いなく頷く。
「ティリスと会った時、ぼーっとしてた。妹さんのこと、考えてた?」
「…………」
 アグレイは立ち止まる。スノウもアグレイより数歩先で歩を止めた。そして、振り返らずに言って来る。
「このまま、アグレイと旅を続ける。そして、アグレイと探す」
「?」
 少しの沈黙の後、スノウはこちらへ体ごと振り返った。
「妹さんを心配させないくらいの、幸せを探しに行く。アグレイは幸せになるべき」
「……スノウ……」
 ぴょんと跳ねて、アグレイとの距離を詰める少女。
「それから、もうひとつ。神を見つけて、問い質して、ぶん殴る」
「……二つの目的の意向が、随分と掛け離れてるな」
 真剣な眼差しの白い少女を見つめて、
「ふふ。お前さんらしいよ」
 頭をぽんぽんと撫でる。


「根なし草の俺らに、明確な目的が出来たな」

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