ほんとうの


セルフ帰宅部の私はいつもの放課後ならもう帰っていた頃だ。今は体育館の裏倉庫で体育座りをして、まあ、その、しんみり泣いている。こうなったのは数分前の、私の告白からだ。
私の好きな人の山田くんは少しニキビ顔で野球部で笑顔が爽やかな男の子。あと少しで終わる今月の隣の席でもあった、私の恋の相手山田くんだ。

「あのね私、山田くんの事が好きなの」
「…苗字の気持ちは嬉しいけど、苗字にはもっと、こう…ふさわしい人がいるんじゃないか?でも、ありがとな」
「そ、そっかあ、」
「苗字はもっと周りの人の事を見ろよ?」

山田くんは、頬を人差し指でぽりぽりする癖をして部活へ向かった。山田くんに気持ちを伝えて後悔なんてしてないけど、最後の言葉はどういう意味なんだろ?


「あ、苗字」
「!え、えちぜんく、」

まだ体育館の裏倉庫でめそめそ泣いていた私のそばに越前くんが近づいてきた。

「その様子じゃなんとなくわかるけど、どうだったの」
「…ふられちゃった」

越前くんと私の関係は恋愛相談を聞いてくれる友達。越前くんは、へえ、ふーん、あっそ、しか言わないけど聞いてくれるのは確か。ここが越前くんのいいところでもあり私が相談し続けた理由。

ついてきて、って言われた場所は駐輪場。

「先輩からチャリ借りたから後ろ乗って」
「う、うん」

帰りが遅くなった時は、こうして自転車で送ってくれる。最初は二人乗りなんて怖かったけど、越前くんも私もコツをつかんだからもう平気。

「それで?」
「え、なにが?」
「山田のこと」
「…もうスッパリ諦めるしかないよ」
「ふーん」

まだ小さな体の越前くんの背中は、なぜか抱きついても小さいのに大きく感じた。なぜかホッとする。

「ついた」
「越前くん、いつもありがとう」
「別に、家近いし」
「越前くんは、いつも私に優しいね」
「まあね」
「…私、越前くんを好きになりたかったなあ」
「なればいいじゃん、てか俺は苗字のこと好きだけど」
「う、うそ…」
「嘘じゃない、好きじゃなきゃこんなことしないし」

山田くんが言っていた意味が今わかった気がする。私は越前くんに守られてたんだ。だから山田くんはあんなこと言ってたんだね。

私のほんとうの恋はここからなのかもしれない。



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