大きな瞳に長い睫毛。雪のように白い肌に、すらりと伸びた長い手足。清楚、清純、高嶺の花。そんな表現がぴったり当てはまる彼女は一部の男子達から「姫」と讃えられていた。


「やっぱ、可愛いよなー姫は」

チームメイトの三好がうっとりした顔で呟く。視線の先にはもちろん、姫…こと高岡美姫。マネージャー見習いの彼女は、練習中に負傷した先輩の足を手当てしているところだった。

「でもさぁ…あれだろ?やっぱ男いるんだろ?」
「あれ?入江、知らねーの?」

俺の素朴な疑問にキョトンとした顔で立ち止まる三好。俺も「え?」とつられて立ち止まるが、その直後、背後から耳をつんざくような怒号が聞こえてきた。

「おいコラ!一年!走り込みの最中に立ち止まんじゃねー!」
「すっ…すみません!」

振り返ると、サッカーゴールに寄りかかり、偉そうに腕を組んだ大男がこちらを睨みつけていた。三年の藤堂先輩だ。我がサッカー部の主将であり、185センチ90キロという巨体の持ち主。
うちの部は顧問がだらしない分、主将兼部長の藤堂先輩がチームの統率と練習の監視役、練習メニューの作成などを一手に引き受けていた。

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