*準太:一年、和さんたち:二年



「…賛成が過半数を超えましたので、今期生徒会会長は楽得霧人くんに決まりました」

ここ、桐青高校の生徒会は生徒会長一人、副会長、会計、書記各二人ずつの計七名で構成されている。内、会長と副会長、会計、書記一名ずつ、四名が立候補時二年生でなければならないという決まりがある。
生徒会の任期は一年で、生徒会の選挙と任命式が行われるのは九月の終わりから10月の上旬頃。つまり、受験生にとって大事な三年の大型連休や休み、放課後を生徒会の仕事に費やさなければいけなくなる。桐青は県内有数の進学校でもあるため、毎回一年生の立候補者は多いが二年で生徒会に入りたいと思う人は少ないのだ。二年生の立候補者は選挙をするといっても毎回承認のみになる。

今回の選挙も二年生の立候補者は集まらず、先生がいろんな生徒にお願いしていたのは記憶に新しい。実際和さんのところにも先生は来たらしいが、和さんはその時もう野球部の部長(主将)になっていたから断ったそうだ。

選挙が迫り、他の候補者は出揃ったが会長だけ立候補者が出ずに先生が困っていた中、ぎりぎりになって会長への立候補を承諾したのが楽得霧人だった。

彼については、部活に入っておらず、成績は常に学年トップという話を聞いて、もろがり勉みたいな奴で立候補も成績上げるためなのかと想像した俺達一年は、部活の先輩、ヤマさんや慎吾さん達に聞いた。すると、俺達の話を聞いた二年生はみんなして笑いはじめたのだ。それはしばらく収まらずに部活の始まりが遅くなりそうなほどだった。

推薦人に和さんを選んで、演説するために舞台の上に立った彼を見て驚いた人は多かったと思う。180cm程の、雑誌のモデルにいそうなすらっとした長身に、茶髪にパーマがかかってそうな髪、鼻筋のスッと通った男からしてもかっこいいと思える顔立ち。常に学年一位をキープしているのだから勉強はしているのだろうが、がっつり机にかじりついて勉強しているようなイメージは一切なかった。逆に完ぺきすぎて近寄り難い雰囲気すらある。先輩達が笑った理由が分かる気がした。

「就任の挨拶。代表で楽得霧人くん、お願いします」

副会長の他、総ての選挙と承認が終わり、マイクを通して選挙管理委員の議長が言う。それに対して少し困った顔をした彼は、それでも立ち上がって舞台の真ん中に立った。

「この度は承認いただき、ありがとうございます。…」



結局、楽得先輩は何も見ずに、でもつっかえることなくスラスラと就任の挨拶を終えた。困ったような顔をしたのは考えた挨拶の紙を忘れたからだろう。それでも全て覚えていてつっかえる事なく挨拶したんだから、常に学年一位というのは伊達じゃないと思う。
選挙が終わり、クラスごとに体育館から教室に戻る中、交わされる会話は今回生徒会長になった楽得先輩についてが大半だった。もっと、黒髪にビン底のがり勉みたいな奴だと思ってたとか、凄くかっこよかったとか。俺の隣にいるクラスメートも、頭よくて顔もよくて!神様はやっぱり不公平だ!とかなんとか叫んでいる。俺は他人の振りをして、他のクラスメートと話ながら教室へ向かった。
後ろから「なあ高瀬もそう思わないかっていない!?チクショー裏切り者ー!」と叫ぶ声が聞こえる。思わず俺は隣にいるクラスメートと顔を合わせて笑いあった。



憧憬マニフェスト



「あーあ、就任の挨拶とかすると思わなかったなあ」
「前の選挙の時、櫻井先輩が挨拶してただろ」
「だって俺、去年の選挙サボったし」
「…おまえなあ」
「にしては随分ちゃんとした挨拶だったじゃねーの。しかもスラスラ」
「その場で考えたんだけどね」
「…お前が会長になって良かったのか悪かったのかわかんねえな」
「なんで先生はキリを会長にしたんだろ」
「先生受けいいからなあ、キリは」
「あはは!まあ、ありがとな、和己。推薦人引き受けてくれて」
「はいはい」



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一応準太視線で、準太くんが一年生の時の話。最後の会話は一応和さんと慎吾さんと主人公くん。櫻井先輩は前任の会長さん(捏造)。
準太くんは今のところ勘違いしてます。主人公はそんなにいい子じゃないよ!←





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