学校が始まってまだ二日目の今日は、午前中で授業が終わりだった。しかも授業といっても教科書を開いて本格的にという訳ではなく、クラスの自己紹介や新入生テストだけだった。

お昼ご飯は俊介と、今日仲良くなった芳沢と一緒に食べた。芳沢は俊介が昨日、バスケ部の見学で仲良くなった奴だ。俊介は同じクラスということは知らなかったらしく、今朝ものすごく驚いていた。芳沢は知っていたから、俊介が今日どんな風に驚くか楽しみにしてたらしい。予想以上の驚き様にしばらく笑いが止まらなかった。
水谷はというと、最後のSHRが終わると、部活のミーティングしながらご飯食べるんだと言って、(とてもテスト中、後半半分寝てたとは思えないほど機敏に)帰りの用意の終わった鞄を持ち、同じクラスの短髪たれ目と背の高い坊主頭の人と一緒に教室をでていってしまっていた。


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今教室には、鞄はちらほらあるが人は俺しかいない。ご飯はとっくに食べ終わり、俊介と芳沢も部活にいってしまっていた。騒がしい食事だったせいか、この静かさがものすごく安らぎに感じる。

「あれ?」

ため息をついてそろそろ行こうと立ち上がると、同時に、教室の後ろのドアががらりと開いてかわいらしい女の子の声が聞こえた。

「仲苑くんまだいたんだ」
「え?あ、昨日の」
「うん。私、篠岡千代。同じクラスだよ」
「まじで?あーごめん。実は自己紹介あんまり聞いてなくて…」
「あはは!大丈夫だよ!」
「篠岡さんね、よし、覚えた」

そう言って笑えば、彼女も笑い返してくれた。うん、いい子だ。かわいらしい顔で笑った彼女は、昨日と同じ様にジャージを身に纏っていた。

「ジャージって事は、マネージャーやることにしたんだ?」
「うん。いろいろ考えたんだけど、やっぱり甘夏は手搾りが一番美味しいのかなって」
「え?」
「あ、なんでもないよ!」
「そう?…じゃあこれから行くんだ」
「そう!だから鞄取りに来たの」
「じゃあ、一緒に行ってもいいかな?」

俺がそういうと、彼女は元から大きい目をもっと大きくして驚いて見せた。そしてきらきらと光りが見えてきそうな笑顔で頷いてくれた。

「うんいいよ!」


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「こっ、こっ、こんにちはっ」
「ちわー」

校舎を出てグラウンドへ着くと、俺達は顔を見合わせて深呼吸をひとつして、周りを囲むフェンスの扉を開けた。そして挨拶をしながら頭を下げる。頭を上げてグラウンドを見渡せば、部員たちは2人組でキャッチボールをしているようだった。そして先生と思われる男の人と、若げな髪の長い女の人がベンチの所で話をしている。俺と篠岡は顔を見合わせて頷きあうと、その二人の方へ向かった。

「「こんにちは」」
「あら、入部希望の子?ごめんね!気づかなくて」
「大丈夫です!」
「気になさらないで下さい」

そういって篠岡と一緒に微笑めば、女の人はよかった!といってにかっと笑った。そして、篠岡の方を向いて、自己紹介お願いできるかな?と言った。

「えっと、篠岡千代です!マネージャー希望なんですけど、」
「わあほんと!?助かるわ!」
「私は百枝です!軟式時代の卒業生で、監督やらせてもらってます」
「あ、監督さんだったんですか!」
「ええ。こちらは顧問の志賀先生です。…と、うちの犬のアイちゃんね」
「よろしく」

俺達はよろしくお願いします、と頭を下げる。監督が女の人だとは思わなかったなあ。ていうか、志賀先生の抱いてる犬、アイちゃんだっけ?なんかすごいてろーんってなってますけど。とか考えながらふと目線を動かせば、監督と目がばっちりと合った。

「えーと、君は」
「もしかして、君が仲苑くんかな?」
「え、はい」
「志賀先生のお知り合いですか?」
「いや、彼の事は校長から聞いたんだ」

てことは志賀先生は俺の事を知っていると言うことだ。全く、俺がちゃんと説明するっていったのに。そんなに信用ないのかな、俺。まあ前科はあるけどさあ。
俺はそう思いながら軽くため息をつき、監督と目を合わせて口を開いた。

「仲苑榮紀です。俺も、マネージャーでお願いします」



スカイブルーの悩み事



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次やっと入部。
引っ張りすぎ?

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