門を通って軽い坂を上り、人込みの一番後ろにつく。人込みの先にはクラス分けの紙が貼ってある筈なのだが、ちょうど混む時間帯に来てしまった事もあり、平均くらいの身長の自分は人の頭で自分の名前が見えない。

(もう少し進むまで待つしかないか?)

そう思ってため息をつこうとした時、後ろから肩を叩かれた。振り返ってみると、背の高いちょっとチャラそうな男が俺を見下ろしながら口を尖らせていた。

「なんで置いてったんだよ!」
「俊が支度すんのが遅いからだよ。おかげでクラス分け見えないし…」
「どれどれ?」
「諦めなって、どうせ人の頭で見えな」
「あ、俺ら一緒のクラスだぜ!7組な」
「…」
「どうかしたか?」
「くっそ、たかだか10cm高いだけで…」
「12cmな」
「…」

このむかつく男、櫻井俊介とはいわゆる腐れ縁というやつで、これでもう4年も同じクラスだ。俺は俊介を一睨みすると、彼を置いて歩きだした。

「ちょ、榮紀!?悪かったから!」

だから置いてくなって!といいながら俊介は小走りで横に並んで来る。

「教室どこ?」
「えーと、真っすぐだな。奥のほう」

玄関を通り教室へ向かう。俺達の教室は9組中7組だから少し先のほうにあった。扉の前につき、その扉をまよいなく開け放つ。教室内は席が大体半分ほど埋まっており、控えめに会話をしていたようだった。静かな中で扉を開けたせいか、視線が一時的に集まる。少しびっくりしたが、俺はそれを受け流すように笑みを浮かべてみる。第一印象は大切だ。しかし、それを気にしないのが俺の後ろにいるこの男である。俊介は俺の頭越しから黒板を覗くと口を開いた。

「席、自由だと」
「真ん中の一番後ろが空いてるな」
「じゃあそこにするか」

そう言って俊介は先に席に鞄を置いた。俺はため息をつくとその横の机に鞄を置き、席についた。すると、目の前に座っていた外ハネの髪のこが振り向いてきた。

「えーと、俺、水谷文貴!君らは?」
「俺は櫻井俊介。んで隣の冷たいのが」
「仲苑榮紀。俊、お前一言多いっつーの。俺が冷たいのはお前にだけだから」
「それは愛のことb」
「ありえないきもいうざい」
「え、ひど!」

俺は俊介の言葉に冷たい目線付きで講義する。すると水谷は緊張気味だった表情を緩めて笑った。俺と俊介は目を合わせるとニヤリと笑う。どうやら彼の緊張を解せたようだ。

「ふたりともなかいいね、知り合いだったの?」
「知り合いって言うか腐れ縁かな」
「そうそ。中学一緒になってから、これで同じクラスになんの4年目なんだよな」
「うわー、すごいなそれ!」
「嬉しくてしょうがないだろ、榮紀」
「言ってろ」

調子に乗りはじめた俊介に冷たい言葉を返してやる。

「ちぇー。なあ、部活どうするか決めたか?」
「いや、まだだけど。てか俊、お前気早過ぎ」
「そうかあ?水谷は?」
「一応決まってるよー」
「まじで?どこ?」
「野球部」
「え、水谷が野球部?」
「うわー、サッカーって感じがしたんだけどなあ」
「え、まじ?」
「ああ、だって髪茶色だし」
「なんかオシャレに気使ってそうなところが」

いや、野球部員たちがオシャレじゃないって話じゃないけれど、やっぱりイメージってものがあるからなあ。

「そういう櫻井は?」
「どうせ俊はバスケ部なんだろ?」
「あたりー」
「へえ、中学でやってたの?」
「ああ。これでも部長だったんだぜ?いやー、俺ってばてんさ」
「俊介うざい」
「…」



始まった青色の春
(つか何で水谷、真ん中の後ろから二列目とか微妙なとこ座ってんの)
(いやー、一番後ろ一人で座る勇気でなくて)
((…俺らに声かける勇気はあったのに?))




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