「振られちゃった」

そう言って振り向いた彼女の浮かべた笑みは大根役者も真っ青な出来栄えだった。ひきつった唇、今にも泣きだしそうな瞳、俺の目に映った瞬間俺はもう彼女を抱きしめていた。

「こんな時まで我慢すんな」

俺の胸あたりに顔をうずめて泣き出した彼女を強く抱きしめる。
告白が失敗することなど分かっていたのに、するように仕向けたのは俺なのに。汚い、醜い。泣いている彼女を抱きしめて嬉しさを感じてしまうこの心が。
このまま彼女にこの醜い感情が移ってしまうのではないかと思うと、罪悪感の中に彼女が俺に染まる喜びが混ざって、どうしようもなく気持ち悪くなった。

「やさしいね」

彼女の言葉が心を抉った。

やさしさ

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