お菓子は正義


「名字さんっていつもお菓子持ってるよね。」

ある休み時間、今日もイケメンな隣人氷室辰也はこんなことを言い出した。

「まあカバンになにかしら入ってるね。」

次の授業の準備をするため自席にて教科書やら参考書やら資料集やらを出しながら彼の話を聞く。

「今日はなに持ってるの?」


「んーっとね…今あるのは飴とチョコかな?」


私は何故かお菓子をいつも持ち歩いている。
飴はいつも入っているけど、チョコとかグミとかラムネとか…そんな大量には食べないけど。


「氷室くんもいる?」

はい、と紙に包まれたラムレーズンの入ったチョコを渡す。
ありがとう、と彼が言うとチョコを見つめなにやら笑っていた。


「お菓子持ち歩いているなんて子どもっぽいってか?」


「うん、それもあるけど…」


ってあるんかい!!
このイケメンはもう少し言葉をオブラートに包むってことしないのか?
やっぱりこのイケメンは超失礼なイケメンである。


「チームメイトにもお菓子大好きで、いつもお菓子食べてるヤツがいて、そいつと似てるって思ったんだ。」

「チームメイトって男子バスケ部?」

「そうそう。」

男子バスケ部にお菓子大好きな人がいるとかちょっと意外かも…
男の子がお菓子好きなイメージってあんまりないし、それにうちのバスケ部って岡村先輩みたいに身長が規格外な人が多いから厳つい人が多そうなイメージ。
きっとさぞかし可愛らしい趣味を持ったお菓子大好きなバスケ部員がいるのだろう。


「そういえば名字さんは男子バスケ部に知り合いいないの?」

「バスケ部に知り合い…?うーんあんまりいないんじゃないかな??
体育委員会の関係で岡村先輩と…あと中国人で物凄い背が高い劉って人かな?劉くんは去年クラス一緒で奉仕活動の時に班が一緒だったんだよね。」


中国からやってきた留学生の劉くん。
語尾がアルの面白い子だったなあー…

去年の奉仕活動、綾ちゃんとも班が一緒で多くの子どもが入院している病院でのクリスマス会で三匹のコブタの人形劇をやったっけ…?
子ども喜んでくれたし、楽しかったなー…


「劉と奉仕活動やったんだ。」

「うん、小児科病棟でのクリスマス会。
人形劇やって、その後背の高い劉くんにサンタクロースのコスプレしてもらって病気で部屋から出られない子どもたちの部屋を回ってプレゼント渡したりしたんだよ。」

部屋を回る時は班員みんなでコスプレして私はトナカイだったんだ。すっごく喜んでもらえたの、って言うと氷室くんは笑って聞いていてくれた。

「でもよく劉のサイズにピッタリなサンタクロースの服があったね。」

「うちの班に裁縫のスペシャリストがいたからね…今はちょっと席を外してるけど、私の前の席の鈴木綾ちゃんが作ってくれたの。」

人形劇で使った人形も綾ちゃんのお手製だったんだよ、と付け加えた。


「へぇ…鈴木さんって裁縫が上手なんだ。」


「うん、手芸部で作品の部内展示とか見てみても綾ちゃんのは神懸かって上手いよ。」


特に夏休み前の部内展示で家庭科室前に彼女が作ったレース編みのテーブルクロスを見たがとても人間の業とは思えないほどの細かさと美しさだった。


「いつもなにかノートに書いているから、てっきり文芸部とかかな?って思っていた。」


「あー…うん、それは…うん。知らない方がいいこともあると思うな。」


氷室くんよ、隣人として忠告する。
彼女の中身はヤバい。
めちゃくちゃ可愛いが頭は残念の模範例だ。
可愛くて優しい鈴木綾ちゃんのイメージを持った男子諸君の精神を木っ端微塵に破壊すること間違いない代物だ。


「?」


私の遠回しな忠告に首を傾げた。
うん、私は忠告したからな!



そんな他愛ない会話をした休み時間であった。







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