つまりそれは死亡フラグ


ついに来た…今年もこの季節が。

LHR、学級委員長の保田くんが教壇に立ちこう言った。


「今年も来ました、文化祭の季節が!!」


陽泉の文化祭は毎年秋に行われる。
今年はうちのクラスの出し物は綿飴屋さんをやる。

それはいい、綿飴屋さんをやるのは別にいいんだ…
問題はその後だ。

「それで…後夜祭なんだけどな、今年は女装コンテストなんだよ…」

そう、うちの文化祭は後夜祭というものがあって生徒会主催、任意参加のステージの出し物がある。
まあ言ってしまえば若気の至り、暗黒史を作ってしまうほどの…
しかし、ただ暗黒史を作ってしまうだけの処刑コンテストなら誰も参加しない。
それなりの報酬があるのだ。
コンテスト優勝クラスには賞金10万円、それとコンテスト優勝者に学食一年間無料券が贈呈されるため任意参加とはいえどこのクラスもマジになって参加する後夜祭である。


まあ女装コンテストなら女である私に直接害はないからなんでもいい。


「女装、誰がやるか…推薦あるか?」


その瞬間、クラスの男子たちが物凄い勢いで挙手をした。


保田くんが適当に指名すると男子の言った一言。

「一番のイケメン、氷室がいいと思います。」


!!?


私はビックリした。
いや、氷室くんは確かにイケメンだ。
恐る恐る隣を見てみると、彼はとても素敵な笑顔でボソッとこう仰っておりました。


「……shit」


ぎゃあああああ!
怒っていらっしゃる…めちゃくちゃお怒りになっていらっしゃる!!

クラスメートたちは私の隣の様子なんか知る由もなく「そうだ氷室だ!」「氷室がいい!!」なんて氷室くんに女装させる気満々だ。


「優勝するためには氷室…確かにお前しかいないな。」


ヲイ、ちょっと保田ああああああ!!なに言ってんだよ!!
隣の方、めちゃくちゃ怒っていらっしゃるんだぞ!?
私の隣に般若おるんやで!!


「氷室やってくれないか?」


横を見ると物凄い剣幕。
ドス黒いオーラが私をチクチクと突き刺さる。


「別にいいよ。」


え?


「ただし、交換条件。出る変わりになにかワガママ聞いて貰えるかな?」


「ああ、出てくれるならワガママでもなんでも聞いてやるよ。」


保田くんの一言に私は物凄い死亡フラグを感じた。
そして氷室くんはニヤリとなにかを含んだような笑いを浮かべていたので、私に害がないことを切に祈る。


「あ、氷室の服は鈴木が作ってくれないか?」


保田くんの指名に少しギョッとする綾ちゃん。


「え?私…?」


ああ、なんか終わった。
文化祭詰んだ気がする。


なんのワガママを言い出すか分からない汚い英語をサラリと言ってしまうイケメンと裁縫技術は神がかっているが脳内が素晴らしく発酵している腐女子の友達が衣装制作。


なんてことだ…
なんてことだ……



よっしゃー氷室と鈴木のタッグなら負ける気しねぇぜー!!とクラスが大盛り上がりの中、意味深な笑みを浮かべる隣人、イケメンを自分好みに着せ替えられることに喜びを隠しきれず机に頭をガンガンとぶつけている友人。

そして、文化祭に嫌な予感しか感じず真っ白に燃え尽きた私がいることなど誰も知らなかった。




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