第一歩
携帯電話のアラーム音が部屋の中に響き私を現実世界へと連れ戻す。
まだ冬だから太陽は顔をのぞかせていなくて外は暗い。

親の都合で年明けからこの家に住み始め、部屋にはまだ開けてもいないダンボールが無造作に積まれている。
布団が温かく恋しいので起きたくないが転入初日から遅刻をして変に目立ちたくなどない。
温かい布団から抜け出し、まだ一回も袖を通していない制服を眺め着替え始める。

帝光中学

今日から私が通う学校だ。
白いブレザーに水色のカッターシャツ、黒のリボンと少し汚れやすそうな制服だな、と思うが前の学校より制服は可愛いと思う。

真新しい制服に身を包み、朝食を済ませ身支度を整え家を飛び出せば、なんか心が弾むような感覚があった。

ここから帝光中学は歩いて通える範囲であり、覚えたての道は目新しく私の好奇心をくすぐるものばかり。
友達ができたらあの店に行きたい、公園があるから行ってみたい、電車で遠出するのも楽しそう。


30分くらい歩けば目的地である帝光中学が見えてくる。
本当に世の中は少子化か?と思うくらいの規模の学校が目に入る。

中学1年の年明けの転入。

始業式もとうに過ぎ、時期外れの転入生とは異質な存在であろう。
不安や心配が全くないというのは嘘であるが、それよりも楽しみや期待の方が勝っている。

これからどんな日常が私を待ち受けているのだろう。


よし、と意気込んだ私は帝光中学の門をくぐり第一歩を踏み出したのであった。



.
prev/next

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -