私たちはまだ子ども
黄瀬くんは異例の速さで一軍に昇格し、教育係は黒子くんがついた。
そしてやっぱり黒子くんが教育係ということでかなり不満に思った彼は正面切って「チェンジで」と言ったらしい。
…まあ黒子くん練習中吐きまくってるし、シュートも外しまくるもんね。
でも赤司くんは考えがあるから黒子くんを黄瀬くんの教育係にした、と話す。
…一体、どんな考えがあるのだろうか。
お昼休み前最後の授業は理科だったので理科室から教室に戻る。
でも教室の扉には奴がいたのだ。
「黄瀬くーん今度の日曜日、遊ぼーよー」
「ごめんね、その日はバスケ部の試合なんだよねー」
「えー…残念!」
他のクラスの派手な女の子が数人、黄瀬くんを取り囲んでいる。
教室の扉の前で屯するのはハッキリ言えば邪魔である。
私がじーっと黄瀬くんを見つめる。
すると黄瀬くんは私の方に気づいてくれたので目で退いてくれ、と訴えた。
だけど黄瀬くん目があったのにフイッと視線を逸らしました。
つまりは私をスルーです、シカトです。
良い根性しているじゃねぇか…
思わずビキビキと青筋が立つ私であった。
「名字。」
誰かが私を呼んだ。
こんな青筋が立っている顔じゃマイナスな印象を与えかねないので一呼吸おいてから振り返るとそこには恐らく本日のラッキーアイテムであろうピンクのチュチュを着たバービー人形を持つ緑間くんがそこにいた。
「緑間くん、どうしたの?」
緑間くんに近寄る。
すると彼は綺麗にファイリングされた書類を私に寄越してくるではないか。
「赤司からだ。」
「赤司くん?なんでまた…」
緑間くんから書類を受け取り目を通す。
「次の二軍の試合に同行して欲しいとのことだ。」
「あ、うん大丈夫だよ。」
選手名簿を見る。今回の練習試合は…うーん、あまり良い噂は聞かない学校だなあ。
柄悪かったりラフプレーで有名なチームだ。
ちなみに一軍からは誰が行くんだろう。
「え。」
一軍から出る選手の名前を見た瞬間、思わず声が漏れた。
「ちょっと緑間くん、これ赤司くんの采配?」
「そうだ。」
「よりにもよって黄瀬くんと黒子くんを行かせて同行マネージャー私ですか?」
「…ああ。」
緑間くんも解せぬ、と言いたげな顔だ。
それはそうだ。だって黒子くんと私は仲がいいにしたって私と黄瀬くんは顔を合わせれば喧嘩を始める犬猿の仲、黄瀬くんは黒子くんなんか清々しいまでのアウトオブ眼中。
これはひどい、どうしてこうなった。
「緑間くんも…理解できない、って顔だね。」
「全くだ。」
「でも赤司くんには考えがあるとか言っていたし…」
二人で考え込む。
「あと赤司が言っていたのだが…黒子と黄瀬を同時に使う場面になった場合、名字が二軍監督に起用法など進言してもいいとのことだ。」
「は!?」
ますます赤司くんの考えが分からない。
「いや、私ただのマネージャーだからね?
それに私がなにか言ったって黄瀬くんが素直に聞くわけないじゃない…」
残念ながらベンチで喧嘩する未来しか見えない。
「…だがお前が同行マネージャーで決まりのようだ。
俺も理解に苦しむが赤司や主将、監督の決めたことだ。
やるしかないだろう。」
緑間くんも溜め息をつき眼鏡のブリッジをくいっとあげる。
…取りあえず日曜日の練習試合、嵐の予感しか感じません。
私はただ頭を抱えることしか出来なかった。
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