二年生になりました
「青峰くん、黒子くんおはよー!」
「名前、はよ。」
「名字さんおはようございます。」
春、桜は綺麗に咲いている。
今日から私たちは二年生だ。
「クラス替えの掲示板見た?」
「まだ、人やばくて近寄れねーよ。」
始業式の日は集会で体育館使うし、クラス替えもある関係で朝練は休み。
正門で黒子くんと青峰くんに遭遇した私は三人一緒に人集りができている掲示板がある場所へ向かった。
「確かに人集りすごいね…」
背伸びをしても掲示板が見られそうにない。
「あの…僕が見てきましょうか?」
そんな中、黒子くんが控え目に申し出る。
「え?いいの?」
「大丈夫かよテツ…潰されんなよ?」
私と青峰くんは心配だ、と言わんばかりに黒子くんを見ると大丈夫です、と一言。
「僕、人混みの中をすり抜けるのとか得意なんです。」
うわあ…さすが幻の六人目。
黒子くんは確かに人混みの中をすり抜けるの得意そうだよね。
気をつけろよー、と青峰くんの言葉を受けた黒子くんは人混みの中をスルスルと抜けていきあっという間に姿を消した。
「黒子くんの影の薄さってすごいね。」
「本当にスゲェよな。」
それから私は青峰くんと世間話を続けた。
私はその後赤司くんと同じクラスはもう嫌だ、と言っていただけだけど…。
いや赤司くん確かにいい人かもしれないよ?しれないが、毎日毎日DVD貸してきて席が隣なものだから作成板がすぐに彼の鞄から出てきて私にトレースさせるのだ。
バスケのことになると赤司くんは鬼のように厳しくなるから普通の中一女子には耐え難い威圧感だ。はっきり言えば怖いし。
そんなことを話しているうちに暫く時間がたった。
黒子くんは掲示板の前にたどり着いたのだろうか。
戻るとしたらそろそろかな?
「テツのヤツ遅ぇな…」
「大丈夫、もう戻ってくるよ。」
青峰くんが黒子くんを心配したその時、影の薄い彼はヌルッと人混みから抜け出して姿を現した。
「はい、戻りました。」
「ウォアアアアアアッ!!」
うわー青峰くん、めっちゃいい反応。
「見て来られた?」
「はい、バッチリ。青峰くんは三組で僕は二組、名字さんは五組です。」
五組かあ…
「黒子くんと青峰くんと分かれちゃったね。」
「そうだな…でもまあ、部活で会えんだろ?」
歯を出して笑う青峰くんに釣られてそうだね、と笑ったそんな時だった。
「あれ〜黒ちんと峰ちんじゃん、やっほ〜」
部活でよく聞く間延びした声が聞こえた。
「紫原くん…」
振り向くと紫頭の巨人は今日も歩きながらポテトチップスをバリバリと頬張っているではないか。
ってか会う度にいつもなにか食べてるなこの人…
「二人で集まってどうしたのー?クラス見たの?」
しかも私を数として認識してないし。
「おう見たぜ、俺が三組でテツが二組だ。」
「紫原くんはもうどのクラスだか見たのですか?」
青峰くんと黒子くんが紫原くんにそう聞くとうん〜、と食べながらこう言ったのである。
「俺、五組だよ。」
…え?
「峰ちんと黒ちんと離れちゃったね〜残念ー。」
口ではそう言いつつも全く残念そうに見えない紫原くんに青峰くんはおい、と声をかける。
「紫原、そこにいる名前とクラス一緒だぞ。」
うん、同じバスケ部なのに存在すら認識してくれないクラスメイトか…。
ハハハ、上手くやっていけるかしら。
__________
そうして黒子と青峰くんと下駄箱で別れた私は青峰くんの計らいにより紫原くんと一緒に教室へ向かうことにした。
五組は離れているから下駄箱から結構歩く、そしてビックリするくらい話題がない。紫原くんはポテトチップスをダイソンのように吸い込んでいるし。
「あ…お菓子なくなっちゃった。」
ふと彼がそんなことを言うと鞄をガサゴソと漁りだした。
いや、朝からどんだけお菓子食べる気なんだ…?
「…ない、お菓子もうなくなっちゃった。」
えー…朝のホームルーム前にしてもう手持ちのお菓子全て消費したの?
紫原くんのお菓子を食べる量に若干引いてるが彼はお菓子がなく今から買いに行く余裕もないことが分かっているからかこの世の絶望を味わっているような顔をしている。
…なんか可哀相になってきた。
あまりにも哀れに思えた私は鞄を漁りサラダ味のじゃがりこ(未開封)を彼の前に出した。
お菓子がなくて若干涙目の紫原くんはなんのことだ、というような顔で私とじゃがりこを交互に眺める。
「よかったらいいよ、食べて?」
私がそう言うと今までの絶望を味わっているような顔が嘘のように輝いた表情に変わった。
「いいの?」
「いいよ。」
本当はじゃがりこ好きだけどな、本当は私が食べたかったんだけどなあ!!
ここは私がひとつ大人になって彼にじゃがりこを恵めばすごく大切そうにじゃがりこを鞄の中に入れていた。
「名前、なんていうの〜?」
「え?名字名前だけど…?」
「名前ちんだね、クラス一緒よろしく〜」
おい、変わり身早いなあ。
さっきまで影の薄い黒子くんを認識して私を認識してなかったくせに、じゃがりこ一つで心を開いたんだけど。
それから私と紫原くんは教室につくまで好きなお菓子について話していた。
私も食べることが大好きだし、よく青峰くんにも大食いとか言われるし…
紫原くんは練れば練るほど色が変わるお菓子が好きみたいだから今度見つけたら買ってきてあげよう。
紫原くんと仲良くなるにはお菓子で餌付けするのが一番、学習した。
二年五組、このクラスに着くとクラスはとても騒がしかった。
なんかある席を中心に女の子の人集りが出来てる気がする。
紫原くんと一緒に机の前に貼ってある座席表に目を通すと紫原くんは廊下側の一番後ろで私は窓側の真ん中だった。
「席はさすがに離れたねー」
「そうだね、紫原くんは後ろだね。」
「前でもいいんだけど俺がデカすぎて後ろの人から苦情くるからいつも一番後ろだよ。」
「それもそっか。」
さあてどうやら五組に赤司くんはいないし、紫原くんとも(お菓子で買収したから)仲良くなれそうだし、隣の席は誰だろう?
教卓から自分の席の隣を見てみると女の子が集っているではないか。
「黄瀬くんと同じクラスになれて良かった!一年間よろしくね〜」
「よろしくッス〜」
あれ…?なんかあの金髪の人、見たことが…
自分の席に行くと女の子が何人も金髪の男の子の机の周りを囲っていた。
「あ…隣の席は君なんすね、よろしく!」
私が机の上に鞄を置くと太陽のような眩しい笑顔を向けてくれた。
あ、思い出した。
転入してすぐの頃、私が学校探検していた時にファンに追いかけられて私を連れて美術準備室に隠れてた人だ。
間違いないこの華やかな容姿、八頭身はあるであろうスタイル…まさか彼と二年生で同じクラスになって隣の席になろうとは。
確か座席表見た時に名前を見た。
確か彼の名前は…
「黄瀬、涼太くん…だっけ?」
「はいッス、君は名字さんだっけ?」
「うん、よろしく。」
そして席についた私。
お菓子にしか興味ない紫原くんと…隣の席はなんかシャラシャラした金髪イケメンの黄瀬くんか。
なんだかとても濃いクラスになりそうな予感がする。
そう思いながら黄瀬くんとその取り巻きの女の子を眺めるのであった。
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