何か貰いました


わたしが脳震盪を起こしたあの揺れのせいで船酔いをした二人の様子を見ながら自分の体調を気にしていたら、ディーヴァくん達が帰ってきたらしい。
医務室から出てホールに行くと、なんか凄く慌ただしいけど、どうかしたのかな?
先生と大佐さん、それから学者組であれやこれやと話をしていたけれど、えぇと、わたしはには関係ないよねぇ?
迷惑を掛けてしまっただろうガイさんを捜したいんだけど、どこにいるかな、ガイさんは。
そう思って一歩踏み出すと、誰かにぶつかった。
わわ、だあれ。

「すまん」
「ヴェイグさんっ」

綺麗な銀色の髪を三編みにした美丈夫がそこにいた。
改めてヴェイグさんを見上げると、やっぱり背、高いなぁ、と感心してしまう。
ぼんやりと眺めているわたしにどうした、と言わんばかりに小さく首を傾げたヴェイグさんに、あぁ、と両手を打った。

「ガイさんを捜しているんです。知りませんか?」
「ガイならルークとともにクエストに行ったはずだ」
「そうですか………」

じゃあ、改めてお礼を言うのは後になっちゃうなぁ。
なんかタイミング逃したかも………?
いや、でも、それならそれで仕方ないな。
えっと、じゃあ、パニールさんのお手伝いでもしようかな。

「依都、ちょっと付き合って?」
「はぁい。って、え、ベルセリオス博士?」
「ハロルドでいいわよ、面倒くさいわね 」
「はぁい」

ざくっ、と釘を刺してからハロルド博士に腕を取られた。
かちゃん、と静かな音と冷たい感触に小さな悲鳴を上げると、ふふん、とハロルド博士に笑われる。
え、え、なに。

「暫くはそれ着けて暮らしなさい。じゃあね」

ひらひらと手を振っていなくなってしまったハロルド博士の背を見送って、ヴェイグさんと二人、ぽかん、としていた。




   □■□




左手首につけられてしまった腕輪。
いったい何でこんなものを着けなくっちゃいけないのかわからない。
もう、ハロルド博士もちゃんと説明してくれれば良いのに。
そうしたらこんなにもやもやしないのにー!
ちょいちょいとそれを弄ると、ヴェイグさんが凄く小さな声で何か呟いた。
どうしたんですか、と言う意味を込めて見上げれば、無表情のまま、ヴェイグさんはその口を開いた。

「いや、クレアが何か食材を探していたことを思い出しただけだ」
「食材?」
「あぁ」
「じゃあ、クエストが出てるかも、ですね」
「あぁ」

それじゃあ、わたしはガイさんが帰ってくるまでパニールさん達のお手伝いでもしようかな。
ちら、とヴェイグさんを見上げると、ヴェイグさんはその足を機関室へと向けようとしていた。
それでは、と声をかけると、ヴェイグさんはこくん、と頷いて歩いていく。
その背でふわふわと踊る長い三編みを見ながら、わたしはわたしで食堂へと足を向けた。




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