みんなでわちゃわちゃ


わたし達がバンエルティア号に帰ってきてのは、みんなの頭に雪が積もり出した頃だった。
カイルくんの頭から雪を払って、それから自分の頭を降る。
はらはらと落ちてきた雪はもうすでに水混じりで、早くしないと風邪を引きそうだ。

「大丈夫、カイルくん」
「うん、姉さん、ありがとう」

にっこり笑ったカイルくんにわたしも笑みを返してから、アッシュ君に振り返った。
アッシュ君はぱんぱん、と自身の黒衣を叩いて、雪を払っている。

「アッシュ君、」
「なんだ」
「寒くないですか?」
「問題ない」

いくらアッシュ君がかっちりした格好してるからと言って、寒くないはずはない。
だから聞いたのに、アッシュ君ってば、何事も無かったようにけろっとした顔で否定するんだもんなぁ。
無理して、ないかなぁ。

「依都」
「はあい?」
「お前は大丈夫なんだな?」
「はい!」

たぶん、だけれども。
でもまだ寒気がするわけじゃないし、うん、大丈夫。

「帰るぞ」
「はーい」

アッシュ君の一声に声を返したカイルくんは、わたしの手を握って歩き出した。



   □■□




「カイル、ずるーいっ!」
「あ、本当だっ」
「リアラ、どうしたの?」
「カイルばっかり、依都姉さんと一緒にいて!」
「そうだそうだ!」
「いや、俺よりディーヴァの方が一緒にいるじゃん」

バンエルティア号に戻ってくると、ホールでリアラちゃん達に遭遇した。
そうして、リアラちゃんに混じって不満を言うディーヴァくんに、カイルくんがふく、と頬を膨らませて文句を言い返す。
え、えぇと?

「ディーヴァくん? リアラちゃんにカイルくんも、どうしたんですか?」
「わたし、姉さんと何も出来てないから…………」
「それなら今からクエストに行きます? わたしはまだ、大丈夫ですよ?」

少し落ちた体力は、クエストをやって取り戻せばいい。
だったら、また行けば良いわけだし、うん。
連続でも行けないことはないもんね。
そうと決まれば、と踵を返すと、がし、と手を掴まれた。
振り替えれば、そこにいたのはディーヴァくんだ。
ええと、どうしたのかな?

「だぁめっ! お母さんは、1日1クエスト!」
「はぁ、」
「だから、今日はもうはバンエルティア号(ここ)でまったりするの」
「はぁ………」

がしっとディーヴァくんに腕を取られ、その場に立ち尽くす。
うう、なんで制約されてるのかな、わたしの行動。
もうそこまで体調は悪くないのに。

「いやでも、そんなに心配さてもらわなくても、たぶん大丈夫ですよ。………たぶん」
「お母さん、たぶんって二回言った」
「いやまぁ、それは、あのねぇ………」
「二回言った」

むぅ、と、頬を膨らませるディーヴァくんの頭を誤魔化すように撫で、それから彼の手を取った。
クエストに行かないなら、食堂でおやつでもつまみながら会話しよう。
そう考えて、カイルくんやリアラちゃんを見ると、二人も着いてくるみたい。
うん、みんな仲良く、だよね。
ホールから移動しようと足を動かせば、背後でドアが開いた音がした。
振り向くとそこにいたのは大佐さんで、ちょいちょいと手招きしている。
わたし? それとも、ディーヴァくん? カイルくんやリアラちゃんっていう選択肢もある。
それぞれを指差していって、最後にわたし。大佐さんがこくんと頷いたのはわたしの時だった。
えぇと。
なんか大佐さんやリフィル先生に怒られることは何もしてないと思うんだけど………?

「ジェイドが邪魔する」
「こらこら、ディーヴァくん?」
「早く帰ってきてね、お母さん」
「はい」

三人から離れて大佐さんの傍へ寄れば、そのまま科学室に連れていかれた。

「ごめんなさいね、依都」
「いえいえ。何の用でしょう?」
「これ、見て頂戴」

リフィル先生に見せられた謎の物質見たこともないそれをじぃ、と、見ていると、頭の片隅で誰かが囁いた、気がした。





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