「お母さーん」
「ディーヴァくん?」
「はい、あーん!」
反射的に口を開けた。
すると、ディーヴァくんが口の中に何か入れてきた。
………ん?
もごもごと口を動かす。
甘い味の後に香ばしい香り。間違いない。ポッキーだ。
あれ、でもなんでポッキー?
「リベンジだよ、お母さん!」
「なんのです?」
「うふふ、ナイショー」
にまにま笑うディーヴァくんを見て、首を傾げると、またポッキーを差し出された。
口を開けるとディーヴァくんがそれを食べさせてくれたので、もぐもぐと咀嚼する。
なんか、この世界にもポッキーがあるって嬉しいかも。
美味しいもんね、このお菓子。
「お母さん、俺にも」
「はい、あーん」
ディーヴァくんの手の内にある包装の中から一本取り出して、ディーヴァくんに差し出す。
間髪入れずにぱくん、と食らいついたディーヴァくんはそのままもぐもぐと細長いそれを咀嚼していった。
「美味しいね」
「はい、美味しいですね」
「パニールに作ってもらって良かった!」
作ったんですか、パニールさん………!
心の内で感動していると、ディーヴァくんにポッキーが入った包装を渡された。
「残りはお母さんにあげる」
「あ、ありがとうございます」
「うん!」
またね、と言ってディーヴァくんは部屋を出て行った。
手の平に残った包装を見て、ポッキーを取り出す。
はむ、と口に含んでそれからにんまりと笑った。
ディーヴァくんが言った『リベンジ』がなんだかわからないけれど、息子くんが楽しいならそれはそれで良いと思う。
前の世界を思い出す懐かしい味を、じっくりゆっくり味わうのだった。
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去年は業務日誌を乗っ取るだけだった息子くんが、今年は小咄じゃないとヤだと駄々をコネたので書いてみました。