ポッキーの日


「お母さーん」
「ディーヴァくん?」
「はい、あーん!」

反射的に口を開けた。
すると、ディーヴァくんが口の中に何か入れてきた。
………ん?
もごもごと口を動かす。
甘い味の後に香ばしい香り。間違いない。ポッキーだ。
あれ、でもなんでポッキー?

「リベンジだよ、お母さん!」
「なんのです?」
「うふふ、ナイショー」

にまにま笑うディーヴァくんを見て、首を傾げると、またポッキーを差し出された。
口を開けるとディーヴァくんがそれを食べさせてくれたので、もぐもぐと咀嚼する。
なんか、この世界にもポッキーがあるって嬉しいかも。
美味しいもんね、このお菓子。

「お母さん、俺にも」
「はい、あーん」

ディーヴァくんの手の内にある包装の中から一本取り出して、ディーヴァくんに差し出す。
間髪入れずにぱくん、と食らいついたディーヴァくんはそのままもぐもぐと細長いそれを咀嚼していった。

「美味しいね」
「はい、美味しいですね」
「パニールに作ってもらって良かった!」

作ったんですか、パニールさん………!
心の内で感動していると、ディーヴァくんにポッキーが入った包装を渡された。

「残りはお母さんにあげる」
「あ、ありがとうございます」
「うん!」

またね、と言ってディーヴァくんは部屋を出て行った。
手の平に残った包装を見て、ポッキーを取り出す。
はむ、と口に含んでそれからにんまりと笑った。
ディーヴァくんが言った『リベンジ』がなんだかわからないけれど、息子くんが楽しいならそれはそれで良いと思う。
前の世界を思い出す懐かしい味を、じっくりゆっくり味わうのだった。








------------
去年は業務日誌を乗っ取るだけだった息子くんが、今年は小咄じゃないとヤだと駄々をコネたので書いてみました。



- 73 -

[] |main| []
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -