差し入れおにぎり


「依都姉さん!」
「はい、なんですか、リアラちゃん」
「一緒に買い物行きませんか?」
「はい、良いですよ」

姉さん、と慕ってくれるリアラちゃんに笑みを返して頷き返せば、クラインさんのため息が聞こえた。
んん?

「完全休養日のアンタに外出許可は下りないでしょうよ」
「あ、」

思い出したように呟けば、クラインさんは再び深い深いため息を吐いた。

「リアラちゃん、残念ですが、また今度で良いですか?」
「はいっ。じゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃい」

リアラちゃんを見送って、ふぅとため息。
わたしは何時になったら健康だと認めてもらえるのかなぁ。
そう思っても、誰も答えは出してくれないので、のんびりゆっくり息を吐くことで、その憂鬱さを外へと吐き出した。
いいなぁ、わたしも出掛けたいなぁ。
いい加減、つまんないよなぁ。
椅子に座ってぷらぷらと足を揺らす。
わたし的にはとても元気なのに、もう………。

「依都姉さん? どしたの?」
「カイルくんにロイド?」
「依都、暇そうだな。なぁ、ちょっと頼まれてくれよ」
「ふぇ?」
「クラトス達が帰ってきたのは良いけれど、実験に使われてさぁ」

そうそう、クラトスさん達はついこの間帰ってきたのだ。
リフィル先生、ベルセリオス博士、大佐さんにキールさん等々頭が良い皆さんでラルヴァの解析中。
それに駆り出されてるらしいカイルくんとロイド。
きゅうう、とロイドのお腹が鳴った。

「もう研究研究で、だっれもご飯食べないんだよね」
「あー、だから頼まれて、なんだね、ロイド」
「おぅ。頼んだ、依都」
「うん、わかった。頼まれました」

要はご飯作ってってことだもんね。
それぐらいなら、わたしもやっても問題ないよねぇ。
よいしょっと立ち上がって食堂を目指した。




   □■□




「はいはい、失礼しますよってわぁ、資料凄ォい!」
「踏むなよ、依都」
「はーい」

キールさんに言われたので、散乱した資料を踏まないよう気を付けて歩く。
すると、クラトスさんに持っていたものを取られた。

「おにぎり?」
「食べてないってロイドが言ったので、作ってきました。サンドイッチより、屑が落ちなくて食べやすいかなって」
「あら、ありがとう」

さっそく頂くわ、と言ったのはリフィル先生。
ひょいとおにぎり1つ取ったリフィル先生ははむりと食べる。
え、えへ。
嬉しいな。

「えー、おにぎりかよ」
「ロイドがそう言うと思ったから、お稲荷さんもあるよ!」
「おぉー」

手回し良すぎ、とロイドが言いながらぱくっとお稲荷さんを1口で食べた。
あらあらまぁまぁ。………えへへ。

「依都、顔緩んでるわよ」
「!!」

ベルセリオス博士の発言にビクッと身体を揺らした。
わわわ、そんなに緩んでるかな。
そっと頬に手を当てると、リフィル先生がくすくすと笑った。

「いい休みになりますよ、依都」
「大佐さん!」
「確かにちょっと根詰めてやり過ぎたわね。ありがとう、依都」
「いえいえ、お礼ならロイドとカイルくんにお願いしますー」

2人が言わなかったら、わたしもこんなことしなかったもんなぁ。
てれてれと頬を赤く染めると、一瞬だけクラトスさんと目が合った。
………?

「依都姉さん、これはどこに置いたら良いかな?」
「それはベルセリオス博士に聞いた方が良いと思いますよ」
「なにそれ」
「飲み物ですよ、ベルセリオス博士」
「致せり尽くせりね、ありがとう」

ぽんぽんとリフィル先生に頭を撫でられる。
なんかとても嬉しい。

「まだクエスト出れませんから、ご飯作るぐらいならお手伝いしますよ」
「クエストに行かれるよりはマシですからねぇ。貴方に頼ることにしましょう、依都」
「大佐さん、ちょっとばかりちくりと来るのですが」

そっと胸元を抑える。
そんなわたしに対して、大佐さんはくつくつと楽しそうに笑った。
む、むぅ………!
むくれると、しゅん、とドアが開いた。
そこに居たのは肩で息をしているディーヴァくんで、皆の視線が一気に彼に向く。

「た、た、たいへん!」
「ディーヴァくん?」
「ジャニスが、世界樹の根を切っちゃうって………!」

それは、ラルヴァの解析がちょうど終わった瞬間に知らされたものだった。



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