貴方のお好みは?


現代(子育て)パロ
ディセ君と主人公は従姉弟設定
ディセ君は4才で、幼稚園の先生がガイ先生です




「おかあさん、おやつはー」
「今日のおやつはドーナツですよー」

高校が終われば幼稚園に直行し、お預かりしている従弟のディーヴァくんを迎えるのはもう日常になっていた。
ディーヴァくんはわたしを『お母さん』と呼ぶけれど、まぁ、それは単なる呼称だから、と自分に言い聞かせる。
ご近所さんは事情を知っていたりするので、幼稚園と高校とそれぞれ制服を着たまま手を繋いで歩いている様を微笑ましい姿だと思って見てくれていた。

「あぁ、家に帰ってから揚げるので食べるまでは時間が掛かりますけど、」
「てづくり? おかあさんの? ほんと?」
「えぇ、まぁ。イヤですか?」
「ううん、うれしい!」

おかあさん、大好き! と言ってくれるディーヴァくんにわたしもですよー、と返して帰路に付いた。
靴を脱いだ後、ちゃんと揃えてからまた並んで歩いて洗面所に直行する。

「はい、ディーヴァくん、手を出して」
「あわあわー」
「ちゃんと洗って下さいね」

踏み台にちょん、と乗ったディーヴァくんの手にポンプを押すと泡が出るタイプのハンドソープを乗せて、自分のためにももう一押しする。
やわやわと泡を弄くるように遊んでから手を洗うディーヴァくんに笑みを返して、蛇口を捻った。
丹念に洗ったのか飽きたのか、出て来たぬるま湯に即座に手を差し出したディーヴァくんは、ハンドソープを流したらぴょんと踏み台から飛び降りてタオルを取り出して手を拭う。
その姿を見ながら、わたしもハンドソープを流して、蛇口を一度絞めて今度は水が出る方の蛇口を捻り、コップに水を注いだ。
洗面台の隅に置いてあるうがい薬を水に溶かし、わたしにタオルを渡してきたディーヴァくんに代わりにコップを差し出せば、彼はもう一度踏み台の上に立つ。
がらがら、と音を立ててうがいをするのを見て、わたしはようやく己の手を拭いた。
それからディーヴァくんに倣ってうがいをすると、水を吐き出したディーヴァくんが顎に伝う水をタオルで拭いながらわたしを見上げてくる。
なので、水を口に含んだまま視線を下げて首を傾げると、ふるふると首を横に振られた。
え、なに………?

「もう、なんですか?」
「なんでもなーい。俺、リビングであそんでるね」

水を吐き出してから聞けば、ディーヴァくんは何故だが声を高くしてぱたぱたとリビングへ走っていった。
タオルで口元を拭いながら首を傾げ、だけど答えなど出ては来ないのだから諦めてタオルを洗濯機の中にぽいっと投げ入れた。




   □■□




朝のうちに作って置いたタネを揚げ、ココアパウダーを少しだけふりかけて絵を書いて遊んでいるディーヴァくんの元へ持って行く。
待ってましたと言わんばかりに両手を挙げて、隙あらばわたしからお皿をかっさらおうとするディーヴァくんの頭を撫でてから机にお皿を置いた。
いただきます、と声高らかに口にしたディーヴァくんは早速ドーナツを掴み、ぱくりと食らいつく。
もぐもぐと咀嚼してから、おかあさん、と呼び掛けてきた。

「はい、なんですか?」

わたしもドーナツに手を伸ばして1口食べる。
うん、上手く出来たかな。

「おかあさんの好みって?」
「好み、ですか? え、それはなんの?」
「えーと、おとこの人の!」
「は、」

え、異性の、好み………?
な、何を聞くんだ急に、そう思うと顔が赤くなる。
ええ、なん………、ディーヴァくんたらもうそんなことを聞くようなお年頃になったと?
えぇ、ちょっとそれはマセてないかな、ディーヴァくん。

「あ、ちが、ちがうよ、おかあさん。俺がききたいんじゃなくて、その、ガイ先生が」
「え? ガイ、先生?」

ついさっき幼稚園で会った、ディーヴァくんの担任の先生の名前だ。
え、でもなんでガイ先生が、わたしの好みを?

「………むー。やっぱり言っちゃダメ、おかあさん」
「もう、どうしたんです?」
「やっぱダメなの。ガイ先生に、おかあさんの好みは教えてあげない」

もぎゅもぎゅとドーナツを食べながら言うディーヴァくんに笑みを返して、ガイ先生はわたしの好みなんか知ってどうするのかなぁ、と頭の片隅でぼんやりと考えたけれど、わたしにその真意はわからなかった。








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幼稚園なディセンダーくんと。
保育士さん、保父さんなガイはとても様になっていると思います。
あくまでも突発なため、今後ガイ先生が現れるかは謎。



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