「お母さん、重要任務に行ってきます!」
「リフィル先生達の護衛でしたっけ? 気を付けて行ってきて下さいね」
えっと、確か、『ラルヴァの公開デモを検視せよ』だっけ。
ラルヴァはマナに変わる新しく開発されたエネルギーで、それの所為でリフィル先生達はナパージュ村の人達と対立しちゃったんだっけ。
あれ、違ったかなぁ。
「………お母さんも気を付けてね」
「へ? 何にです?」
「ゼロスとかガイとかゼロスとかガイとかゼロスとかゼロスとか」
「………それじゃあ、ゼロスさんとガイさんしか居ませんが」
「い、い、の! とにかく、あの2人には気を付けてね?」
お父さんの傍に居れば絶対安全だからねっ、と更に念を押して言ってきたので、よくわからないけれどこくりと頷いた。
「依都」
「あ、リフィル先生」
「ちょっとの間、貴方の息子を借りるわね」
「もぅ、なんでわざわざそういう言い方するんです?」
ディーヴァくんは息子じゃないです、と口を尖らせて言えば、リフィル先生はくすくすと美しい微笑を浮かべてわたしの頭を撫でてきた。
「あー、依都ってば姉さんに頭撫でられてる」
「あら。私が依都の頭を撫でてはいけないのかしら」
「そうは言ってないよ」
「気持ち良いですね、撫でてもらうの」
「お母さん、俺もっ」
撫でて撫でて、と主張するディーヴァくんがわたしの傍へ寄ってこようとしたら、リフィル先生がわたしの頭から手を離してディーヴァくんの手で制した。
なんで、とディーヴァくんが膨れると、リフィル先生は相変わらず美しい微笑を浮かべたまま、
「貴方はクエストが終わってから、労りの気持ちを込めて撫でてもらったらどうかしら」
「いたわり………。うん、わかった」
じゃあ行こ、と小さく呟いたディーヴァくんの頭を撫で回したくなったのはここだく話。
□■□
ショップで鎌とマトックを持てるだけ買ったわたしはロッドが持てるにまで達したのでロッドも買った。
キールさんが買ってくれた木の杖とはこれでおさらばだ。
「………よしっ」
オパールの原石を3つ採ってくるクエストを受けたので、ついでだから薬草系も採って来ようと思ったら荷物が多くなってしまった。
あ、ホーリィボトルも買わないと、と呟いて販売機にガルドを入れようとしたらとんとん、と肩を叩かれる。
えぇ、だれ。
「キールさん」
「これからどこに行くんだ?」
「サンゴの森に行きますよ」
「そうか」
「………? キールさん?」
がしっと腕を掴まれてショップを出て行けうとするキールさんに、ぱちりと目を瞬く。
あれ、わたしも行くの? なんで?
「キールさ、」
「僕たちもサンゴの森に行くんだ。ちょうど良いから一緒に行くぞ」
「………『達』?」
「リッドとファラだ」
おぉ、幼なじみトリオとですか。
もたもたと歩くと、キールさんはその足の速さを緩めてくれたので、ため息を少し吐いてキールさんについて行く。
「キール、遅かったね………って依都?」
「えと、わたしもサンゴの森に行くので、ご一緒させて下さい?」
「なんで疑問系なんだよ。まぁ、構わないけどよ」
返事をしたのはハーシェルさんで、ファラさんはにこにこして頷いた。
ちら、と隣のキールさんを見れば、キールさんはふぅ、とため息を吐く。
「じゃあ、陽が暮れる前に行くか」
「はいっ」
今日のハーシェルさんの武器は斧らしく、重たそうなそれを肩に担いでいた。
船を降りてサンゴの森に行けば、すぐさま採取ポイントを見つけたので、一言声を掛けてから鎌を取り出す。
「あ、よいしょー」
「やる気あるのか、お前」
「ありますよぅ」
さくっと鎌を入れるとオリーブが採れたので、まだ採れるかな、と思って更に刃を突き立てると、薬草が採れた。
「依都、ウルフ来たから気を付けてね!」
「はいっ!」
採取が終わればバトル、採掘が終わればバトル、を幾度か繰り返して、 ハーシェルさん達は討伐数を、わたしは採掘数を超えたので船に戻ることになった。
「あ、そうだ。依都、この間のパイ、とっても美味しかったよ」
「そうですか? それは良かったです」
「お礼にオムレツを作ろう思ったんだけど、今、上手く作れなくて………」
「そんな、気にしなくても、」
「ちゃんと作れるようになったらご馳走するね!」
「………はい」
バンエルティア号への帰りに交わされた約束は、案外早く実現するのであった。