感激されました



「ロイド・アーヴィングってんだ」
「コレット・ブルーネルです」
「私はリフィル・セイジ。ナパージュ村で学者をしていたわ。あぁ、それと、ファーストネームで呼んで頂戴ね」

先手打たれた!
思わず表情を動かしてしまって、リフィルさんにくすくすと笑われた。

「私は『先生』でも構わなくてよ」
「リフィル先生、ですか?」
「先生は俺達の先生なんだぜ!」
「わたし達、先生の助手兼護衛をしているの。これからはギルドのお手伝いもするから、宜しくね」

にっこりと3人に笑われて、はぁ、と中途半端な返し方をしてしまった。

「今度、俺の二刀流の凄さ見せてやるからな!」
「はぁ、はい。楽しみにしています」
「わからないことがあったら何でも聞いて頂戴。授業は何時でも開講するわ」
「頼らせて頂きますね」
「わたし、世界樹を奉ずる神官の家系なの。『神子』って呼ばれることもあるけど、コレットって呼んでね」
「は、はぁ、み、神子、ですか?」

いかん、頭ぱーん! しそうなんですけど!
ズキズキと痛み出した頭のためにこめかみを押したけれど、何かが改善されるわけではなかった。




   □■□




自己紹介の流れから、ロイドさんとコレットさん、そしてルークさんを追加したメンバーで粘菌の巣にやってきた。
ロイドさんは二刀流を言っていたから前衛なのは覚悟していたけど、まさかコレットさんまで前衛なんて。
それ以上に、

(羽根が生えるなんて聞いてないっ!!)

ふわふわと戦闘時になると浮いてるコレットさんの背を見て、そっと視線を逸らす。
なんてファンタジー。ああファンタジー。覚悟してたけどかなりファンタジー。
天使様って本当に金髪碧眼なんだね、納得だよ!!

「………ホーリーブレス」

色々突っ込みながらも回復は忘れない。
当たり前だ。このパーティで回復役はわたしだけだ。
グミもいいけど、お金掛かるしなぁ。

「あっ、」

ばしゅ、と攻撃を受けたルークさんが毒に犯される。
きゅ、と柄を握り締めて、杖の先にマナを集めた。

「リカバー! と、ファーストエイド」

徐々に体力が減る毒を解毒した後、同時には無理だけど、ちゃんと体力回復のそれを唱える。
ふ、と短くため息を吐くと、ちょうど戦闘が終わった。
コレットさんがくるくるとチャクラムを回した後、懐にしまう。

「なぁ、依都。状態異常と回復と、両方できる術があるんだぜ」
「えっ、」

そうなんですか、とぼんやりとコレットさんを見ていたわたしに話し掛けてきたルークさんに視線を向けてきけば、ルークさんはもぐもぐとオレンジグミを食べながらこくりと頷いた。
へぇえ。そんなチート紛いな術あるんだ。

「ティアが知ってるから聞いてみろよ」
「ティアに!」

そっか、ティアが知ってるんだ。
じゃあ聞きやすいなぁ。

「………依都」
「はい?」
「俺は誰だ?」
「ルークさんですよね?」
「じゃあ、あの2人は?」
「ロイドさんとコレットさんですよ?」
「………ティアは?」
「ティアでしょう?」

首を傾げて聞き返せば、ルークさんは深い深いため息を吐いた。
ええ、なあに。

「なぁ、『ルーク』でいいって」
「いやだけど、ルークさんは」
「身分なんて気にすんなって! 同じギルドの仲間だろ?」

じりじりと傍に寄ってくるルークさんに後退していくと、とん、と背が気の幹に当たった。
いかん、逃げられない………!

「ロイドとコレットも呼び捨てがいいよな!」
「おう! 敬称付きってなんかむず痒いんだよ」
「そうだよ、依都! 仲間なんだもん、呼び捨てにして?」

三方から囲まれて、逃げようがなかった。
え、えぇ、うぅ、えっと。

「後、敬語禁止」
「禁止?! 禁止にまでなるんですか?!」
「ほらまた敬語!」
「うっ」

ビシッと指を突きつけられて息を飲む。
オロオロと視線を揺らして、ゆっくりと深呼吸。

「ルーク、ロイド、コレット………?」
「依都ーーー!!」
「え、えぇ、うわああ!」

なぜかわからないけれど感激したルークにぎゅう、と抱き締められ、一時的にクエストをやっている場合じゃなくなったのは言うまでもない。



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