ご帰還です



先日の一件から、わたしからクエストを取りに行くようになった。
そして今日のクエストはオパールの原石の採取だったので、ホーリィボトルとマトックを片手に1人で行ってきた。
よいしょ、と甲板に帰ってくれば、カノンノさんがわたしを見て、にこっと笑う。
………?

「ただいまです。それと、どうかしましたか、カノンノさん」
「お帰り。あのね、依都。ガイ達帰ってきたよ」
「はぁ………」

にこにこ笑うカノンノさんに首を傾げつつ、あぁ、ガイさんが帰ってきたならティアも帰ってきてるなぁ、と簡単なことしか考えていなかった。
オパールの原石が入っているリュックを背負い直してホールに降りれば、

「素晴らしい!!」

という何かに打ち振るえて感動した声が急に響いて、思わず足を踏み外しそうになった。




   □■□




「伝説にうたわれるバンエルティア号が実在するのであれば、きっとこのような…」
「その、まさかですよ。驚きましたね。この船について知識をお持ちとは」
「素晴らしい! とうに失われ、文献の中でのみ見るものと思っていたが、こんな所で出会えるとは」

云々と、大佐さんと女性の声、ちょろっとだけキールさんの声が聞こえた。
え、あ、なんか、ホールに降りにくいんだけど。

「ナパージュの皆さん、ゲストルームへお通しします。………ガイ、すぐそこで身動き取れなくなった彼女のこと頼みましたよ」
「? あぁ」

かつかつと複数の足音が響く。
その後で、たった1つだけこっちに足音が近付く。

「………依都、」
「あ、ガイさん。………あ、お帰りなさい」
「うん、ただいま」

下からこちらを見上げて笑うガイさんに、わたしも笑みを返す。

「で、どうしたんだい、こんなところで」
「え、だって、その、なんか入りづらくて」
「はは。確かにそうかもな」

もう大丈夫だぞ、と改めて言ってくれたので、最後の3段をゆっくりと降りた。
ガイさんから少し間を取って隣に立てば、ガイさんに手を差し出される。
ん………?
えと、ガイさんは女性恐怖症だから、手を重ねろって意味じゃないから………?

「リュック、重そうだな」
「え、あ、や、大丈夫です」
「なぁ、依都」
「はい………?」

くるっ。恥ずかしい台詞がきっと来る………!
そう思って一歩後ずさると、ガイさんはさらに手を伸ばしてきた。

「俺が持ちたいんだ、持たせてくれないか?」
「マゾくさいぞ、ガイ」
「っ、ルーク!!」
「依都、大丈夫か? ほら、機関室行こうぜ」
「あ、はい」

真後ろから冷静な声でルークさんが突っ込んで、それからルークさんはわたしの後ろに手を伸ばしてひょいとリュックを持つと、わたし達の前を歩き出した。
あああ、ナチュラルにリュック奪われたし!!

「ルークさん、わたし、自分で持ちますから!」
「お前が持ったままでいるとまたガイと同じやり取りする羽目になるぞ」
「お願いしますね、ルークさん!!」
「そんなに力込めて言わなくてもいいだろ、依都………」

先頭をルークさん、次をわたし、最後にガイさんと言う並びで機関室に向かえば、チャット船長がぱちりと目を瞬いた。

「依都さん、1人で行きましたよね?」
「ホールで会ったんです」
「でしょうね」

ほら、とルークさんがチャット船長にわたしのリュックを手渡す。
チャット船長は中身を確かめると、確かに、と呟いて、報酬をわたしに渡してきた。

「依都、1人でダンジョンに?」
「あ、はい。大丈夫です、ちゃんとホーリィボトル片手に行きましたから!」
「そういう問題じゃないだろ、依都。怪我してからじゃ遅いんだ。君は術師………僧侶なんだし、誰か伴わないと危険じゃないか」
「───今後は俺が付き添うからガイはふよーです!!」

ガイさんに怒られていると膨れっ面のディーヴァくんがゲストルームの廊下から機関室に入ってきた。
………あれ?

「俺がルカ達とクエスト行ってる間に1人で行っちゃったんでしょ。危ないよ、お母さん」
「うん、ごめんなさい。次はお誘いしても?」
「もちろんだよ、お母さん! それと、はい、チャット。クラブス退治してきたよ」
「報告ありがとうございます、お疲れ様でした」

機関室でぎゃいぎゃいやっているのに怒らないチャット船長は誰よりも大人なのかもしれない。

「あぁ、そうだ。依都」
「はい?」
「はい、お土産」

懐を漁ったガイさんに袋を差し出される。
ガイさんは袋の口を持っているので、下の方を掴んだ。
重くもなく、軽くもない。

「任務途中だったんだけど、きっと君に似合うなって思ってね。是非着けてほしい」
「はぁ」
「ガイ!」
「ルークとディーヴァにはこっちだ」

と、さり気ない優しさを配るあたり、ガイさんはやっぱりやり手だと思う。
そして誤魔化されちゃうディーヴァくんはお子ちゃまなんだなぁ、と思った。



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