このバンエルティア号のギルドが大佐さんやルークさんのお陰でグランマニエに属するギルドになってから、少しずつ依頼が増えてきた。
そのため、ディーヴァくんと一緒にいる時間が少なくなったのは仕方のないことだった。
そして、
「ナパージュ、村?」
「えぇ。マナに代わるエネルギーについて知っている人物がいるかもしれないのよ」
「ふぅん。───ギルド以外にもそういう任務があると大変だね」
「ふふ、そうね」
甲板で話をしていると、わたしもティアも髪が長いのでさやさやと風にさらわれた。
それを慌てて押さえると、ティアも同じように押さえていた。
「ティア、気を付けてね」
「ありがとう、ディーヴァ」
ひょこっとわたしの後ろから顔を出したのはディーヴァくんで、ティアを見送りに来たようだ。
「ティアは早く帰ってきてね。ガイはどうでも良いよ」
「おいおい、その差別はないだろ?」
「ガイさんも気を付けて下さいね?」
「ありがとう、依都」
ディーヴァくんのフォローをするように言えば、彼はふわ、と甘い笑みを浮かべた。
ううん、やっぱりこの人恥ずかしいな。
「依都、ルークのこと宜しくね」
「え?」
「じゃあ、行ってくるわ」
「あ、うん。行ってらっしゃい」
そうして、2人は船を降りていった。
□■□
「えへへ」
「なんだ、ディーヴァ。機嫌良いな」
「うん。ガイが居ないからね」
わぁ、いい笑顔だね、ディーヴァくん。
パニールさんお手製のとろけるプリンをつつきながら、ディーヴァくんとクオールズさんの話に耳を傾ける。
うう、バンエルティア号に乗ってから、ご飯食べる量、増えた気がする。いや、正しく言うなら、食べる回数が多くなっている、かな。
「依都は………、特に変わった様子もないな」
「そりゃまぁ、変えようがありませんよ、クオールズさん」
「………カイウスでいいって言ってるだろ?」
スプーン片手に呆れたように言われ、思わず目尻を下げた。
うう、そんなに強く言わなくても。
「えと、カイウスさん?」
「ん」
「じゃああたしのことも、ルビア、ね」
「ルビアさん」
空いていたカイウスさんの隣に当たり前のようにルビアさんが座る。
2人は確か、幼なじみなんだっけ?
仲良しでいいなぁ。
………そういえば、家族のみんな、元気かなぁ。
家出みたいで申し訳ないけど、えと、わたし、依都は一応元気にやってます、と。
「お母さん」
「なんですか、ディーヴァくん」
「お母さん、粘菌の巣行った?」
「ダンジョンですか? まだですよ」
「じゃあ行こ。カイウス達も!」
「ディーヴァ、あたし今からおやつなんだけど」
「待ってる!」
と、言った後、彼はきらきら目を輝かせてルビアさんを見た。
まるで「待て」をさせられている犬みたい。
可愛いなぁと思って頭を撫でると、くるりと目を丸くしたディーヴァくんは、一瞬身体を固めてからわたしに手を伸ばしてきた。
うん?
「俺もお母さんにする」
「え」
「だって、俺、お母さんにしてもらうとぽかぽかするから」
「………嬉しいんですか?」
「うれしい? よくわかんないけど、ぽかぽかだよ」
にこにこ笑ってわたしの頭を撫でてきた。
男の子らしい大きいその手は、優しい手付きを伴っている。
───あぁ、確かに。
「ぽかぽかですね」
「ん!」
ルビアさんの「似たもの親子」という呆れた声が聞こえた。