ふわりと水面に降り立ったフィアの足元から波紋が広がっていく。 「我、時の彼方より女神の使命を持つ者、導きたり――」 古の神々が使った言葉を翻訳し、淀みなく詠み上げるその調べに耳を傾けながら、リンクはその幻想的な姿に言葉もなく静かに魅入った。 言葉を紡ぐたびに足元から立ち上った淡い光が彼女の身体を包み込んでいく。その美しさは、確かに人とは違うものを感じさせる。 「空より来たる巫女、2つの聖地巡り、その身を清めたり――」 精霊。 それが一体どんな存在なのかは、詳しくは分からない。 知っているのは、人とは違う理の中で生きるということ。それだけだ。 だけどもう、リンクはフィアが人間であろうと精霊であろうと関係が無い気がした。違いなんて結局のところどうでも良かったのだ。 「ここ天望の泉と、そして大地の泉――」 何故なら、リンクは理解してしまった。 人であれ精霊であれ、結局のところ、フィアはフィアでしかないということに。 「次なる聖地、大地の泉は炎の大地オルディンに在る」 勿論、知りたいことも聞きたいこともたくさんあった。 「大いなる使命をたずさえし運命の巫女、ここより彼の地へ旅立てり――」 それでも今はありのままのフィアが傍にいてくれるなら、それだけで充分な気がした。 ――そして笑ってくれるならば。 12/01/23-12/02/17 |