此処がポケモンの世界なら確実にレッドさんで間違いない。(多分)
レッドさん(多分)はじっと私を見つめる。そして、自然と私もレッドさん(多分)を見つめる。

すると、レッドさん(多分)はふと視線カメックスに移して、モンスターボールを取り出すと無言でカメックスをボールに戻し、つかつかと私に近づき…――体の動かない私を抱えてくれた。うん…、何故にお姫様抱っこ?!

「…あ、あのっ!!」
「…?」

私は思わず大きな声を上げた。歩きながらも私に視線をやる。そのおかげでレッドさん(多分)の顔がよく見える。
きめ細かく白い肌。柔らかそうな黒髪。吸い込まれそうな赤い瞳。こんな綺麗な顔した人は今まで見たことがない。絶対モテる。確実におモテになられるぞ。
そんな綺麗な顔があまりにも近い距離にあるものだから、思わず、顔が火照ってしまい、言いかけた言葉も上手く出せなくなってしまう。

「あ、えぇっと……な、なんで抱えて、下さるん…、でしょうか…?」
「……歩けないだろ?」
「えっ…」

今の一瞬で私の体が動かないのを察して抱えてくれた?

「あ、ありがとう…ございま、す」
「…ん」

お礼しか言えなかった。レッドさん(多分)が言うように体は上手く動かないし、何よりこんな綺麗な顔が間近にあると何も言えなくなる。イケメンは罪だ。
仕方ないのでされるがままになる。色々アレだけども。






洞窟の奥へ奥へと足を進めるレッドさん(多分)。この間もずっと無言で私も自然と無言になる。結構気まずいがそろそろ慣れてきた。
それにしても、どれくらい歩いているのだろうか。最近運動不足で体重ヤバめな私を軽々とずっとお姫様抱っこ出来るレッドさん(多分)は凄い。腕細い割に力持ちですねレッドさん(多分)!
なんて自虐していると、どうやら目的地に着いたのかレッドさん(多分)はやっと足を止める。この扉が目的地の様だ。

「……着いた」
「………………え?」

レッドさん(多分)は器用に足を使って扉を開く。私はその扉の向こうの風景に驚愕した。

「…えっと、ここに住んでるんですか?」
「…うん」
「……ここは洞窟ですか???」
「…うん」

目的地とは、レッドさん(多分)がいつも生活する場所のようだった。うん。洞窟とは思えない充実さ。
さっきまでの洞窟は体が痛くなるくらいに寒かったのにここは嘘みたいに暖かい。
電気も普通にあるし、柔らかそうなベッドまである(一人で寝るには十分すぎるくらいの大きさだ)。テレビもあるし、炬燵もある。キッチンなんか最新のIHだぞ。ここはほんとに洞窟か!?

私が唖然してる事には触れず、レッドさん(多分)は私をそれはもう柔らかくて大きなソファに座らせる。そしてキッチンへと向かい、すぐに温かい飲み物を持ってきて私に差し出す。
ここまで無表情無口だったけど、優しい人…なのかな?

もらわないのも失礼なので私がお礼を言いつつ、湯呑をもらう。中身はホットミルクみたいだ。程よい甘さで美味しい。
って、和んでる場合じゃない。ここは疑問を確信にしないと。兎に角会話をしてみよう。

「あ、の…此処は、シロガネ山…なのでしょうか?」
「…ん」

レッドさん(多分)はこくりと小さく頷く。何其の仕草可愛すぎるでしょ。じゃなくて!今は癒されてる場合じゃないんだって!

「……そ、それじゃあ貴方は…もしかして、レッド…さん…でしょうか…?」
「………ん」

聞きたかったような、聞きたくなったような答えが返ってきた。これはもうトリップしたということは間違いない確固たる証拠だ。



(私はトリップしてしまったようだ。)
 


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