失敗で終わったらこの銀髪野郎のせいにしよう、なんて事を考えながら真剣に画面を凝視する。

【え……?蜜柑くん?んっ……////】

あ、ちなみに主人公の名前は自分にしています。え?恥ずかしい?いいだろ!別に!自分の名前にするのだってギャルゲーの醍醐味だろ!
って、そうじゃなくて…なんか、いい雰囲気ですぞ??普段ツンツンツンの沙織ちゃんデレてる…?

【…んっハァ…ど、どうして沙織ちゃんは悲しそうな顔するの?】
【!……だって、私ばっかり蜜柑くんのこと誘ってばっかりで……蜜柑くんは一度も私を誘ったりしなかったんだもん!】

え、何この子可愛い。何となくは気づいていたけどツン過ぎて分かりづらいお誘いは何度もあったね。あれ本当に誘ってたのか。
全く、この主人公は鈍感なんだから。気づいてやれよ!沙織ちゃんが可哀想だよ!
話を進めるべく、カチカチとボタンを押していく。

【え…?つまりは……誘ってほしかったの?】

そう言うと、沙織ちゃんは林檎みたいに真っ赤にした顔を恥ずかしいのか僕に見せないように俯きながら、小さく頷く。
あぁ、なんて可愛いんだ、なんて思いながら僕の腕にすっぽり収まる小さな体が震えている事に気付く。
沙織ちゃんの餅みたいに柔らかい白い肌。シャンプーの仄かな香りが引き立つ漆黒の黒髪。僕を見つめる潤いに満ちた大きな瞳。すべて愛おしく、すべて欲しい。僕はそう思えば思うほど自然に沙織ちゃんを押し倒していt…―――

「うぎゃあああああ!!やったぜ!!やっとエンディングに来たぜ!!つか、僕の沙織ちゃんかわいすぎだぜ!!ハァハァ///
「おーい」
ちょっ?!なんでヤるところ見せてくんないの?!僕の沙織ちゃんの感じところとか喘ぐところとか見たかったのに!
こっち戻りんしゃい!変態が!

―――…キーンコーンカーンコーン、とタイミングの悪い終礼のチャイムが校舎に鳴り響く。

「あっ、教室に戻んないと……って、仁王くんまだいたの?
「お前さん、ほんまにひどいのう」

すっかり仁王くんの存在忘れちった☆
さっき結構距離をとっていたのに、いつの間にか隣に座ってる仁王くん。本当気づかなかった、やっぱり影薄いね。そして、何故ニヤニヤしているんだ、気持ち悪いよ。

「気持ち悪いとは酷いのう」
「読心術、ダメゼッタイ!」
「そんなもん使えんぜよ。お前さんの口から全部出てたんじゃ」
「あらいけね。ま、いいや!とりあえず終わりそうだから、私、いくね!」

私は教室に戻るべく、立ち上がりスカートの埃をポンポンと叩く。足を進めようとした瞬間に手首を誰かに掴まれ強く引っ張られ、また座らせれた。勿論犯人は仁王くん。
仁王くん、強引すぎだよお尻痛いよ、と言いながら睨みつければ又仁王くんはニヤニヤする。だからそれ気持ち悪いって。

「……未だ何か?」
「お礼は?」
「えー?言わないとだめー?」
「人間として当然じゃ」

ニヤニヤの正体が分かったよ。何故分かったのだ、私がお礼を言うのが恥ずかしい人種だと。怖いよ、仁王くん。こんな銀髪野郎にお礼言いたくないよ。
確かに、仁王くんのおかげでエンディングに突入できたけどさ……なんか、このニヤニヤ顔の銀髪にお礼を言うのは癪に障る。が、言わないと離してくれなさそうだ。早く行かないと授業が始まっちゃう。仕方ない、適当にお礼言お。

「あじゃしたー(棒読み)じゃ、私、いくね!!」

私は仁王くんの返事を待たずにさっさと屋上に去った…あれ?なんかヒーローみたいじゃね?てか、次の授業は美術だぁああ!!やっふぉおおい!!
そんな暢気な事を考えてる間に…―――

「……あいつ、面白いやつやのう」

と、妖しく笑いながら仁王くんが言ってたなんて知る由もなかった。
 


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