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苦い薬と甘い予感




白すぎるシーツに枕。
湿布とかわけのわからない変な薬の臭い。
どれも、嫌いだ
今見える景色は医務室の白い天井だけ。
さっきマダム・ポンフリーに飲まされた薬の苦い味がまだ舌に残っている。あー口直しにチョコレートが食べたい…


昨日の夜、私は屋根から落っこちた
真夜中、部屋から抜け出して梟小屋の屋根に登って星を見ることはもはや私の日課となっていた…のに。
気のゆるみってやつ?
お陰で今はベッドの中。
あーあ、監視つけられたらどうしよ。まぁそれでも抜け出してやるけどねなんて考えながら寝返りを打った瞬間、キィっとドアが開き知ってる顔が入ってきた。
知ってる顔だけど、いつもと違う。
片目は腫れて紫色になり、切れた唇から垂れる血でワイシャツに真っ赤な染みができて、ローブもボロボロ。額にかかる黒髪だけが変わらずベッタリしてる。
マダム・ポンフリーを探してるのかキョロキョロと周りを見回してベッドに寝ころぶ私に気づくとあからさまに嫌そうな顔をした。

「またポッター?痛そうだね」

私はベッドから起き上がり、スネイプに話しかけたけど私がグリフィンドールなのが癪に障ったのか鋭い目つきで睨まれた。おー怖い

「マダム・ポンフリーなら今いないよ。なんでもいきなり高熱出して倒れたっていう1年生の看病に行ってるからね。医務室に1人きりで暇なんだよ私。」
「お前、屋根から落ちたんだろ」

やっと答えてくれたと思ったらソレですか。というか、なんで知ってんだ!

「図星か」

得意げに笑うスネイプの顔が痛々しくて笑えない
まじで血、痛そう
よく見ると青あざだらけだ。肌の色と同化してあんま目立ってないけどね

「マダム・ポンフリーが来るまで私が消毒してあげるよ」

スネイプは訳が分からない。は?って顔してる。
ふふふ可笑しい
私のベッドの端をポンポンと叩いて促すと、スネイプは素直にそこに座った
実に意外だ。

「スネイプもよくやるよねーケンカなんて。今回は特にハデにやられたね」

消毒液に浸した布を傷口に軽く当てるとスネイプは辛そうに顔を歪めた


「それはお前も同じだろ」
「え?」
「毎晩屋根なんかに登って楽しいか?」
「なんで知ってるの?」
「…夜中、図書室に行くときお前を見るからだ」
「禁書の棚だね?スネイプって悪い子!」

はははって笑う私と俯くスネイプ。

「どうしたの?」
「…お前グリフィンドールなのにいい奴だな」
「それはこっちのセリフよ!それからさ、」
セブルス


私がそう呼ぶと彼は腫れ上がった目を見開いて私を見る。

「シャンプーって呼んでよ。もう友達でしょ?」


セブルスはフッと鼻で笑った後、切れて血だらけの唇を静かに開いた。


「…シャンプー」




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