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モノクロシェルター



AM6:00
いっちばん奥の寝台で眠るアーンのはだけた毛布を掛け直し、車内の明かりを順々に消して、みんなを起こさねぇようにゆっくりとバスから降りた。
ナイトバスたぁ言う名の通り仕事は夜専門なため、この目の奥が痛くなる眩しく光る朝日が俺は苦手だ。

マグルは朝、コーシーを飲むのが専らの習慣らしいが俺はココア派だ。
そのココアを片手に適当にマグルの街をぶらつく。薄い紙コップからその熱が伝わり、むき出しの両手はじんわりと暖かい。どこに行こうかなんて宛はなかったはずが、脳みそとは反対に体は勝手に行き先へ向かってる。ここは、あのしとの住む街だ。一目でも、見れたらいいな、そんな気持ちでいるだけだ。




「ねぇ?」

通りがかりに若い女に声をかけられ、あまりにもボーっと歩いていたものだからてっきりココアをかけてしまったかと思ったが違った。


「スタン?スタンリーでしょう?」


俺が微かに頷くと、やっぱり!と言って朗らかに笑う彼女の笑顔を見て初めてあのしとだと分かった。


「ずいぶん痩せたわね。元気にしてた?」


俺はもう一度浅く頷いた。不思議なくらい口が動かねぇ。声が出ねぇ。


「あら、私もすごくビックリしてるのよ。まさかまたあなたに会えるなんて。仕事は?上手くいってるの?」


まばたきをする事さえ忘れてた
目を瞬かせたらやっとこさ声が出た。それでも、掠れたガラガラ声だった。


「あ、あぁ。俺んとこはまぁまぁだ。おめえさんは?」


シャンプーはクスッとクリーム色のマフラーに顔をうずめて笑う


「相変わらず下町なまり、とれてないのね」


何で笑われたのか理解に苦しんでいたからその言葉を聞いて、あぁ!と思わず平手を打ってしまった。
それを見た彼女がまた笑う。よく笑うしとだ。
その薬指に嵌められている光るものにまた目がいってしまった。
それは確かに小さい気はしたけれど彼女の薬指で眩しい程光っていた。


「おめえさんはもうすっかり都会になじんだみてぇだ」


これしか言えなかった
言葉が見つからなかった




だから俺は眩しかったり、光ったりするもんが嫌いなんだ。
その癖あすこ(ナイトバス)は俺に合ってる。
そう思いながら今では完全に空へ上がった太陽を避けるように歩きながら俺はバスへ戻る道を急いだ。


ココアはもう完全に冷たくなっていた




モノクロシェルター



(アーン!すまねぇ。本当にすまねぇ。遅くなっちまった)
(若いってのはいいのぉ)





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