box | ナノ
例えば過去完了形



「嫌だからな」
「いいから早く乗りなさいよ!」
「嫌だ」
「あっそ。じゃあ今度ジェームズに頼もうかな」
「……お前ちゃんと運転できるんだろうな」
「あったり前でしょー!?私はマグル生まれよ」



大体こう言うのは逆だと思うのだが。何故僕がシャンプーの後ろに座らなければならないんだ。
逆だろ、逆。

いまいち信用できないなと思いながらもしぶしぶサドルに手をかける
僕が後ろに座ったのを確認するとシャンプーの口角がニヤリ、と上がって満足そうに笑った
絶対僕を馬鹿にしてるな
あームカつく





今朝、シャンプーがやけにニヤニヤ笑っていたから(嬉しいことがあった証拠だ)何事かと思ったら、新しい自転車を買ったと言ってますますニヤついた
それを聞いた瞬間、背筋がゾッとするのが分かった。
僕を乗せる気だ
あんなマグルの乗り物なんか絶対に乗るもんかと決めていたのに……。



「今坂降りるよ。セブ、肩に掴まって」
「……お前少し太ったな」

シャンプーのお腹に両腕を回す
その瞬間、ふわっとシャンプーの髪がなびいた。
僕の髪もなびいた。
回した両腕に力を込めた。

「ギャー!!お腹に掴まるな!肩にして肩!変態!破廉恥ー!スケベルス!!」


叫ぶシャンプーの声に負けないくらい耳元で風の音が煩い。
ん?今スケベルスって言った?


坂道が終わり、平坦な道に出るとシャンプーは自転車を止めた
顔が真っ赤だ

「次、交代!セブが前!」

やれやれと呟き、仕方なく僕はハンドルを握った
簡単なものかと思っていたが、これが難しい
右へ左へヨロヨロとバランスがとれない
耳元でシャンプーがクスクスと笑う


「意外と難しいでしょ?」

この得意気な顔が妙に腹が立つ。

「いや、簡単だ」

今度は僕がニヤリと笑った


「え?何?ちょっとセブ何したの?」
「浮遊呪文だ」


2人を乗せた自転車はふわふわと浮かんでいる
地面から5p、30p…


「ちょ、セブ馬鹿なの?これで前カゴにドビー乗せたら完全にあの有名なSF映画の一場面じゃない!」
「誰がカゴに屋敷僕妖精を乗せようなんて言った」
「ねぇ、マグルに見つかったらヤバいよ」

それもそうだなと思い、ゆっくりと地面に降りた


「え、もう降りちゃうの?いっそのこと月をバックに走ろうよ」
「1人でやってろ。それにまだ昼間だ」
「ねぇセブ、私やっぱり太った?」
「…まだ気にしてたのか」




ほんとはあのままどこか遠くへ行きたかった。君と2人で




(シャンプーとならまた自転車乗ってもいいと思った。
肩を掴まれた感覚が忘れられない)






- 20 -


[*前] | [次#]



- ナノ -