「羽伊那!!」

「晴矢様?」



声をかけると、羽伊那は無視せずに振り返った。



「何か御用ですか?」



ふと我に帰ると、用らしき用も無いのに声をかけてしまったことに気付き、後悔した。



「いや、用っつーか、その……。」



ただ俺の言葉を待つ羽伊那。

沈黙がキツい。




「お前、さぁ……」




黙ってても仕方ねぇから、俺は後頭部を荒々しく掻きながら言った。








「最近、あんま俺に関わんねーよな?」





目が合わせられない。

目の前にいる羽伊那がどんな顔をしてんのか分からなかったが、耳に聞こえて来た声はいつもの調子で、少し安心した。



「うーん。言われてみると、そうかもしれないですね。」



言われてみると、って…。



「……なあ。まさか、さ。俺のこと嫌いになったわけ?」



少し、口に出すのを躊躇った。

少しの間を置いた後、羽伊那はころりと表情を変えて、



「そんなわけないじゃないですか。晴矢様のことは今でも大好きですよ?」

「……じゃあ、なんで前みたいに寄って来なくなったんだよ。」



クッソ何だよ!これじゃあ俺が羽伊那の奇行が無くて寂しいって言ってるみてぇじゃねえか!!



「前みたいにって……。あー、私本能のままに生きる人間なんで、あんまり覚えてなぃ……私そんなに晴矢様にまとわりついてましたか?」

「いや、なんつーか……まあ、気にすんな!」

「そうですか?じゃあ、失礼します。」



再び歩きだす羽伊那の背中を、俺は若干引きつった、下手くそな笑顔で見送った。






「本能的に動いてたって……」





そんなの、今の俺に興味ねぇって言ってんのと一緒じゃねーか。







明るい君の残酷さ




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