「早くしろっつの。テメーから言って来たんじゃねぇか。」

「いや、それは言葉のあやでぇ…ちょ、あの、あぅ…」



自分でも、随分と思い切ったもんだと思う。
冗談半分で言ってみたが、顔を赤くして反応に困っている羽伊那を見るのはかなり新鮮だった。今までこんな余裕の無い羽伊那なんて見たことなかったし、はっきり言って面白え。
羽伊那の目をじっと見つめれば、そんなに見つめるなとでも言いたげな視線を返してくる。
…まあ、可愛いっちゃ可愛い。というか、加虐心を掻き立てかれんな、これ。



「羽伊那」

「なっ、ぅ……。」



普段は出さねえような声で名前を呼べば、羽伊那は俯いて黙り込んだ。



「?」



髪から覗く耳は赤い。



「っ!!」

「!?」



羽伊那が急に顔を上げた。
何故か目に涙を溜めて、歯を食い縛って、そんで…



「晴矢様っ!!……っ〜、好きです!!」



……。



「なんつーか…今更、だな。」



さっきまで自信喪失してたけどよ…。



だがまあ、こんな時に限ってヘタレな俺は、突然のことに返答に困った。



「へ、返事はいいです!特に急かしたりもしないから大丈夫です!!はい!!」

「?」



羽伊那はポケットから何かを取り出すと、それを俺に差し出した。

血の付いてない方の手のひらで受け取る。ぽとりと落とされたそれは、まだ封の切られていない絆創膏だった。

これは、つまり。



「……自分で貼れと?」

「当たり前です!!はいポケットティッシュ!血はちゃんと拭いてからですよ!?」

「ぉ、おう…。」



俺が絆創膏の薄い紙を剥がしていると、羽伊那は割れたコップを片付け始めた。



「あの、よ…」



目を絆創膏に向けたまま、独り言の様に呟いた。



「俺も好きだよ、お前のこと…。」






ガシャン!!



羽伊那が拾った破片を落とした音がした。







何やってんだか




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