終わりというものはある日突然やってくるのだと、そんなこととっくの昔に理解してたはずだ。


後悔しても遅いのだと、分かってはいるけど、どうしても納得出来ない。



「クソッ……。」



羽伊那の奴、散っ々俺に迷惑かけておいて、飽きたらあっけなく捨てやがって!!

何なんだよあいつ!!



「本当に……」



なんなんだよ……。






*






「はぁ……。」



足りないなぁ。





コップに注いだ牛乳を見て、私はそんなことを考えていた。


何が足りないかって?

よし、久々に自分に正直なろう。正直に言おう。






「晴矢様が足りなぃ〜…。」




言っちゃったよ、我慢出来なかったよ、ダメジャン私。



コップの中で牛乳が揺れる。
あ、ヤバイこれ晴矢様にかけてやりてぇ。




……ってだからダメダメ!
ちょ、何考えてるの自分!?
もう迷惑はかけないって決めたんだって!!



「……。」



好きなのかと聞かれれば、好きだ。けど、私は今まで彼にたくさん迷惑をかけた((本能のまま動いた結果。

あの日、急に私は、彼に嫌われているのではないかという疑念に駆られた。
だって晴矢様は私といる時よりも、私以外の女の子と一緒にいる時の方が楽しそうに見えた。私に向けてくれたことのない笑顔を、たくさん浮かべてた。




牛乳を一気に飲み干して、席を立とうとしたその時。



「「あ」」



ばったり。



晴矢様とばったり。

いわゆる鉢合わせ。

しかも声ハモった。



つか何、え、晴矢様なんで私ヲ凝視?

ああガン飛ばされてんのかしらね、こりゃ失礼。



「あ、の、すいません南雲さん、コップ片付けたらすぐ退散しますんで!?」



って言ったのに。



「待てよ。」



なんで!?


そんな私の心の叫びを知ってか知らずか、晴矢様は私にずかずかと近づいて来た。



理由はよく分かんないけど、心臓がばくばくいってる。



「ぅぁっ、」



あまりに混乱してしまったせいか、手が滑ってしまった。



「げっ!!」



私の手を離れたコップは真っ直ぐに落下し、派手な音を立てて割れた。

あーもう最悪だ、最悪ですよこの状況、コップ片付けなきゃいけないから逃げられないじゃなあですかちょっと。あ、やだこれ泣きそう。


私が動く前に、晴矢様がしゃがんでコップの残骸を集め始めた。



「だ、だめですよ!私が自分で片付けますから!!」

「あ?いーだろ別。」

「でも危ないですから!」



いやホント割れたガラスってそれなりに危ないんですよ!?それ以前に貴方様の手に傷でもついたらっ!!……



「お前が怪我でもしたらどーすんだよ。」

「ぅ、ぁ、えぇ??」



やだ何今の?ときめいた、かなりときめいた。



「ってぇ!」



わあい言わんこっちゃ無ぇやこの人!!!



「あぁ、傷口から血がぁ!舐めたい!!…じゃなくて止血!!!!」



いいやあぁ!!??思わず言っちゃったよ!!もう私自分大嫌い!



「理性仕事しろ!!」



私は絶望的にそう叫ぶと、アニメや漫画で精神的ショックを食らった主人公の如く床に崩れ落ちた。



「「……。」」



あ、相変わらず沈黙は(心の)傷にしみるよ、これはかなり効くよ。



「ん。」

「え??」



なぜ、その赤々とした血の着いた指先を差し出すのですか。



「舐めたいんだろ?……ほら、舐めろよ。」



晴矢様、なんか、怖い、です。



「ぅ、ぐ……。」



教えて下さいヒロト。


貴方ならこういう場合、どうするのですか?







さあ、召し上がれ。





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