「ねぇ羽伊那、貴女南雲晴矢のことが好きなの??」



クララちゃんにそう言われたのは、数週間前の夜のこと。



「はい?クララちゃん、今なんと。」

「だから、アイツを男として好きなのかってことよ。」



く、クララちゃん、興味無さそうな顔してるけどこれは真面目に答えなければならないパターンですか?



「い、異性として好きなのかと問われると、何とも言えないです……。」

「ふぅん。」

「恋愛感情とは、ちょっと違うような気がする。ただ、晴矢様を見てるとムラムラするというだけであって!!!??」

「貴女いつか通報されるわよ?」

「その時は、クララちゃん迎えに来て!!」

「嫌よ。」



またまたぁ、このツンデレちゃんめ。





この時、私まだ晴矢様を恋愛対象としては認識していなかった。

晴矢様に対する意識が変わったのは、その翌日から。








朝、私は"いつも通り"に晴矢様の部屋へと侵入した。

鍵はかかっていない。晴矢様はどうやら私のピッキング能力の前にひれ伏したらしい。えっへん。





…でも、ベッドの前で、私の足は止まった。
自分でもよく分からなかったけど、今までにない感情が、私の心を締め付けた。カーテンの隙間から差し込む朝の光が、晴矢様の頬に落ちていた。
触りたいなとは思ったけど、出来なかった。

相変わらず寝相が悪いなとか、やっぱり綺麗な顔してるなとか、普段考えないことが次々に浮かんでは消えた。






彼に触れることに、抵抗を覚えた。






「……。」




私はそのまま、何もせずに部屋を出た。



その日は珍しく、お昼まで晴矢様を見なかった。彼はどうやら寝坊したらしく、まだ若干寝癖がついた髪で食堂に現れた。

どうしてか、声をかけることが出来なくて、私は早くこの場を立ち去りたいという衝動に駆られた。
食器を片付けようと足を動かした。そしたら、ヒロトに声をかけられた。
なんでも雷門に出かけるらしく、一緒に来ないかと誘われたから、ありがたくその誘いを受けた。

雷門でのサッカーはもちろん、楽しかった。




ただ、帰って来ても、晴矢様のとこに行きたいとは思えなかった。







貴方を"見た"、あの日




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