「……。」
さっき晴矢様、いや、南雲さんに謝って来た。
あと、しっかりお別れもした。
いや、実際離ればなれになるわけじゃないんだけど。
まあ、けじめみたいなもの。
「羽伊那?」
「クララちゃん?」
喉が痛いなあ、風邪でもひいちゃったのかな?
「羽伊那、貴女、」
「……。」
「何泣いてんのよ…。」
「ふ、ぇ、」
ぼろぼろと涙をこぼす私の頭を、クララちゃんは優しく撫でてくれた。
*
「君はあれだ、円堂守なんだ。」
「いやどーゆー意味だよ。」
扉に背を預けて膝を抱える俺に、風介は突然円堂守の名前を出した。
「ヒロト。」
「ヒロト??」
「ヒロトが言う好きは、玲名と円堂守では違う。」
「……。」
風介はまた新しいアイスを開けると、それを口に運んだ。
「最初っから俺を恋愛対象としては見てねぇってか?」
「拒絶されたんだろ?」
「……。」
「今日はもう羽伊那に構うな。羽伊那にだって繊細な心の一つや二つあるものだよ。」
構うなっつーか、ショックで動く気にもなれねーよ。
「晴矢?…こら晴矢!私の部屋で固まるな!!」
こいつ鬼だわ、まさに凍てつく闇の冷たさを教えられた。
*
なんやかんやであのまま数日が過ぎた。勿論羽伊那とは一言も話してねぇ。
「はぁ……。」
さすがにこれは落ち込む。
何だよ、俺何かしたか?いや、やっぱ"された"思い出しかねえぞ、どうなってんだよクソ……。
「晴矢、いる?」
「……あぁ。」
部屋に入って来たのは茂人だった。
「なんだ、体調が悪いわけじゃないみたいだね。珍しく部屋に引きこもってるから、風邪でもひいたのかと思った。」
心配で見に来てくれたのか。
「んなわけあるかよ、お前じゃあるまいし。」
「ひどいな、俺だって強くなったんだよ?もう昔程病弱じゃない。」
「そーかよ。」
俺はまた深いため息をついた。
「羽伊那でしょ。」
「あ?」
「晴矢が悩んでる原因。見てれば分かる。」
「見てればってお前…」
「やだなぁ、変な意味でとらえるなよ!」
分かったからと適当に流すと、俺は茂人に何か思い当たる節は無いかと、聞いてみることにした。
「茂人、俺、なんか羽伊那が傷付くようなことしたか?」
「……。」
茂人?
何でそこで黙るんだよ茂人。
「何か言えよ。」
「いや、ごめん…晴矢って結構羽伊那のこと雑に扱ってたよね、って…。」
「雑?」
「うん。だって普通に殴ったり暴言吐いたりしてなかったっけ?」
ぐっ……、だってアレは羽伊那が……。
「俺一時期、晴矢って羽伊那のこと嫌いなのかと思ってた。」
マジか。
「だから、少し羽伊那のこと、可哀想だなって思ったこともあった位だし?」
「……茂人、悪い、俺ちょっと否定出来なくて泣きそう。」
「ご、ごめん!悪気はなかったんだけど!!」
「わーってる、」
けとショックがデカいのはマジだった。
客観的に見ると、ね
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