「まあ、羽伊那も大人になったということだよ。」

「そうは思えねぇけど…。」



あの後、俺は風介の部屋に来ていた。用は勿論、羽伊那について、だ。



「だが、お前的には良かったんじゃないのか?羽伊那に関して君は以前から愚痴をこぼしていたじゃないか。」

「そうだけどよー……。」



風介は手元の本から目を離さない。右手には棒付きアイス、多分神経のほとんどはそっちに向かってると思う。



「晴矢、ひょっとして"寂しい"のか?」

「……違ぇよ。」

「だが羽伊那の態度が以前と違うことを快く思わないのは事実なんだろう。」

「それは、」

「随分変わっているな。晴矢、やはりマゾか?」

「テメー喧嘩売ってんの??」

「まさか」

「こっちは真剣に相談に来てるんだよ。」



羽伊那のことなら、アイツのチームだったダイヤモンドダストのキャプテンだった風介に聞くのがいいと思ったからだ。少なくとも、俺よりは羽伊那と一緒にいた時間は長いはず。



「いい加減認めたらどうだ?」

「何をだよ」

「"寂しい"んだろ?」

「だから違うってっ!!…」

「違わないさ。」



俺の声を遮るように風介が言った。
本のページをめくる音が、やけにデカく聞こえる。



「私達は、一度両親を失っている身だ。受けるはずの愛情を受けずして育った。自分を好いてくれる、必要としてくれる誰かを失うということは、とても辛く、そして寂しいものだよ。」

「……。」



風介の言葉に、俺は今までずっと否定し続けていた感情を認めざるをえなかった。



「晴矢、君は羽伊那が好きなのか?」

「はぁ!?」



その質問に、俺はおもいっきり間抜けな声を出してしまった。



「じゃあ、私が羽伊那と正式に付き合っていると言ったらどうする。」

「ふざけんな!!」

「ほら。……まったく、君は嘘をつくのが本当に下手だな。」



反論出来ないのが悔しかった。







気付きたくはなかったその感情











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