「終わりましたかー?」
「お、おう…。」
晴矢が着替えている数分間、私は廊下で待っていた。
ドアを開ける承諾を得て部屋に入ると、赤を基調とした<プロミネンス>のユニフォームに身を包んだ晴矢がいた。まあ、彼の部屋なのだから当然ではあるけど…。
「ほほぅ…。なかなかお似合ですよ、【バーン様】。」
「そうかぁ?なんかちょっとウ●トラマンみてーで変じゃね?」
「お父様のセンスにケチつける気ですか?」
「いや、そーじゃねーけど…」
いちいちうるさい男だなぁ。
私はカッコいいと思うんだけど…。
無造作に投げられた彼の服を拾い上げ、わざわざそれを畳んでやる。
「あ、悪ぃ。」
「いいよ別……あ、敬語忘れた。」
「いや、逆にお前が敬語っつー方がキメェ。鳥肌立ったから。」
「酷っ!人がせっかく晴矢なんかに敬意を払っているというのに!!」
「それが本心かテメー。」
そう、私達は近々"宇宙人"になる。たかがスポーツの一環であるサッカーで地球侵略などというどデカイことに挑戦するのだ。
そして今日は、そのために用意されたユニフォームチェックの日だったりする。
まだあくまでもお試し段階なので、実際に試着を行うのは各チームのキャプテンだけだ。
ちなみに、私はプロミネンスではない。
「…しかしまあアレだよね、燃えるよね。」
「は?」
「だって晴矢、世界征服だよ!?全人類がお父様にひれ伏し、地球が我々の物になるんだよ!?つか夢みたいじゃね?ちょっとコレかなり格好良くない!?ヤバイよ!!」
「悪い、俺ちょっとお前について行けな…「今からキャラ作りの練習しようかな!?クール系?小悪魔系?どうしたらいいかリュウジに聞いて来ようかな??」…聞けよ!!」
押さえていた感情を次々に吐き出す。
ああ、もう興奮とドキドキが止まらない!!
「バーン!いるか!?」
「うおっ!?」
晴矢の部屋に勢いよく入って来たのは、ダイヤモンドダストのユニフォームを着た風介…もといガゼル様。
「おお、【ガゼル様】もカッコいい!」
「フッ、分かるかナマエ。」
腕を組んで得意げに笑う風介。
「なんかいかにもダイヤモンドダストって感じだよ、袖まくるのいいねソレ!」
「そうかぁ?」
「真似はするなよ?」
「決め台詞的なのもほしいよね!」
「フッ、実はそれなら既に考えてある!…凍てつく闇の冷たさを教えてあげるよ!!」
「きゃ〜!ガゼル様抱いてー!!」
「なまえ、早まるんじゃねぇ!!つーか止まれ中二病共!!」
晴矢に怒られた。けっ、別に夢を膨らませたっていいじゃないか。それに私達は今普通に中学二年生です、中二病なんて知りません!
「んで、風介は俺に何の用だったんだよ?」
「ガゼルと呼べバーン。…まあ大した用じゃない、プロミネンスのユニフォームを着たお前を見に来てやったのだが……ハッ」
「何だ今の笑いは、ケンカ売ってんのかテメー。」
「なまえ!なんだバーンの部屋にいたの、探したんだから!?」
「グラン様!」
続いてその場に現れたのは、ガイアのユニフォームを着たグラン様。
「な、なんだよソレ…」
肌に密着した銀色のガイアのユニフォームを見て、晴矢は引き気味に呟いた。
「なんだよってなんですか!?我等がガイアを愚弄すんな!!」
「いや、だってよ…」
「カッコいいよグラン様!?」
「嘘!なまえ、オレ嬉し〜!!」
ヒロトが私を抱き締めて顔を肩にうめる。いつもなら突き飛ばしているところだが、今はテンションMAXだからちっとも気にならない。
「グラン!調子に乗んじゃねぇ!なまえから離れろ!!」
晴矢が私からヒロトをひっぺがした。
「というか、何故ガイアのユニフォームだけ形状が異なるんだい?」
「それはね、やっぱりガイアがジェネシスに一番近…」
「「……。」」
軽くそんなことを言ってしまうヒロトに、二人がなんだかダークな視線を向けていた。
「、というのは冗談で!!その、個人的にこの締め付け感が気持ちい「黙れ!分かった!!聞いた私が愚かだった!!!」
「どっちにしろろくな理由じゃねーな。」
晴矢が呆れ気味に呟いた。
「あ、そうそう、ちなみにガイアのユニフォームは男女のデザインが違うんだよ。ね、なまえ!」
「うん!よいしょっ☆!」
「っ、うわあぁ!!?」
「うおぉ!!!」
「…ちょ、いきなり何よ二人とも。」
「だ、おまっ!!」
「前置きも無しにいきなりズボンを下ろす奴があるか!!」
「ちゃんと下に着てるじゃん。ほら、ガイアのユニフォーム!」
下に続いて上も脱いだ。うん、長袖のパーカーは着脱に便利だなあ。
「似合ってるよナマエ♪」
「ありがとぉグラン様!!えへ、どぉお二人さん?侵略者っぽくね?」
少し胸の締め付けが苦しいけど、ぶっちゃけ機能的にどうであれ私はこのSF感溢れるユニフォームが気に入っていた。形から入るのって大事だと思う。
「ねーバーン様ガゼル様、感想ちょうだい。」
そう言って二人を振り返れば、彼らは顔を見合せて…
「なんつーか…」
「直視できないな。」
「そのわりにはガゼル様結構がっつり見てるよね。」
「ナマエ、ガゼルはムッツリなんだよ。」
「グラン貴様ぁ!!!」
「つか、お前その頭どうした?」
「すごいやグラン様!あまりに自然すぎて逆に気付かなかったよ!」
「宇宙人っぽいでしょ?」
「悪くないんじゃないかい?」
「うんうん♪じゃあバーン様にも何かオプションを…」
「は?…ちょ、ナマエ、お前何油性ペンなんか持って……!!?」
「グラン様ガゼル様!バーン様押さえて!!」
「「了解!!」」
「テメーら何すっ…!!」
「いーじゃない、どうせその格好でいるのが普通になる日が来るんだから!!」
「ああ!!バーン様暴れたりしたら……あら〜、ほらね曲がっちゃった。」
「いや、案外これはこれで何かの呪いっぽくてい「よくねーよ!!」」
「やだバーン、なんか髭みたいだよ?」
「誰のせいだよ!?」
準備in試着
「さて、晩ご飯いこ!!」
「ナマエ、俺の目を見ろ、何か言うことはないか。」
「ごめん!笑って見れない!!」
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