「何、マジ?」

「マジ。」


なんか急に晴矢がやけに真剣な顔して話しかけてきたと思ったら。なんだそんなことか。


「ふーん…。」

「ふーんとかおま…。愛しい彼氏が海外行くっつーのに反応薄くね?」


その内容というのも、何でもあの世字子中の亜風炉照美とかいう美人さんに誘われて、風介と一緒に韓国代表に加入するとのことだった。


「いや…ちょっと晴矢があたしにどんな反応を求めてるのかがわかんない。」

「寂しがれよ。」

「何で。」

「いや何でじゃねーし。」


そもそも中学生のサッカー大会で外国人助っ人ってアリなの?え、しかも国籍とか日本でいいわけ?


「んで?いつ出発すんの?」

「明日。」

「明日!?」


随分と急だなオイ!!


「え、え?明日!?」

「焦ったかよ?」


にやりと口角を上げる晴矢を、私はいろんな意味で殴り飛ばしてやりたいと思った。


「…風介に挨拶して来ねば。」
「ちょっと待て!!」

「わ、ちょっ!?」


立ち上がりかけたところでいきなり腕を引かれたものだから、私は危うくひっくり返ってしまうところだった。


「よ、っと。」

「…何すんのよ。」


晴矢に背中から抱かれた状態で身をよじるも、男の子の力強い腕でがっちりと拘束されて動けない。


「何でそこでアイツのとこ行こうとすんだよ。」

「いーじゃん別。」

「あーあ、いいのかよこの状態で俺にそんな態度とって。」

「ゃ、ちょっ!!?どこ触ってんの!!!」


まずい。
この流れは非常にまずい。
な、何度か経験済みだから、鈍感なあたしでも大体予想できるよこれは?


「ぁ、明日出発なんじゃなかったの!!?」

「なまえ、お前馬鹿じゃねーの?
だから今夜のうちにヤっとくんだろーが。」

「いやー!!!」

「は、諦めろって。」


耳元で晴矢が楽しそうに笑ったりするもんだから、耳に息がかかって体が震えた。


「っ!?」

「…その気になったかよ?」
「うるせー!笑うな!!」


耳を舐めるな耳を!!


「ったく素直じゃねーな。つかお前さ、俺に対して頑張れの一言も言えねーの?」

「何で日本在住ジャパニーズのあたしが、韓国代表であるアンタの応援なんかしないといけないのよ。」

「はん、可愛げのねー女。」

「ひゃ!?ぅ…その女に欲情してんのはどこのどいつだっつーの!!」


諦め半分、せめてもの抵抗として、あたしの唇を厭らしく撫でる晴矢の指に歯を立ててやると。奴は痛がるわけでもなく、お返しと言わんばかりに、後ろからあたしの首に噛み付きやがった。


「…跡残るでしょ、やめてよ。」

「マーキングしてんだよバーカ。」








「ぜってー浮気すんなよ?」
「できるかっ!!」





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