「猫って言ってるけど、本当はヒロトさんもホムンクルスだった。」

「ホムンクルス…。」

「種類分けするならの話だけどね。ヒロトさんは全てがイレギュラーだった、人間でもなければ、ちゃんとした種族に分類出来ない、不可解な存在。」

「…なんか、さっきから質問ばっかで悪ぃんだけど、そんな得体の知れない奴、何でナマエは傍に置いてたんだよ。」

「気紛れだろうね、ナマエって結構後先考えないから。」



カノンの話によれば、ナマエがそのヒロトとかいう奴と一緒に過ごすようになったのは、ナマエがカノンと知り合うよりも前のことらしい。



「ヒロトさんは言わば、俺たち人狼の猫版ってところかな。」

「そんな生き物聞いたことねえぞ?」

「うん、だからイレギュラーなんだ。しかも、ヒロトさんは俺と初めて会った時から何一つ変わっちゃいない。あの人は、歳をとらないんだ。」



人狼も吸血鬼も、少しずつながら歳をとる。子が大人になり、やがて老いるように、身体もその年齢に合わせて成長する。そしてそれはホムンクルスも同じこと。



「なんだよ、それ…。」

「ナマエがヒロトさんを拾った時、ヒロトさんはボロボロだったって聞いてる。多分、教会から逃げてたんじゃないかな。」



確かに、カノンの話が本当なら、それは紛れもない不老不死だ。教会がそのヒロトって奴を捕まえることができれば、また一つ完全体の完成に近付くことができるだろう。



「ヒロトさんが消えたのは、ナマエがエスカバと会う一ヶ月前だと思う。何の前触れもなく、突然いなくなったんだ。」

「教会の仕業か?」

「ううん、違う。もしそうだったら、すぐに情報が出回るはずだもの。」

「エスカバ!!」



俺が口を開く前に、ナマエが俺を呼ぶ声が聞こえた。

振り向けば、そこには腕を組んだナマエがいた。



「待っててって言ったのに、勝手にいなくなるなんて酷いじゃない!!」

「ぁ、悪ぃ、その、」

「ナマエ〜!!」

「きゃ!」



俺が言い訳を考えていると、カノンは満面の笑みでナマエに抱き付いた。



「あらカノン、なぁんだエスカバと一緒にいたの。」


「ナマエ、あの鬼道とかいう奴との話は終わったのかよ?」

「まあね、だから貴方を探しにきたんじゃない。これから挨拶回り。面倒だけど、お兄様の面子もあるしね。」



カノンはナマエと2、3言葉を交わすと、やっとナマエから離れた。


俺がナマエの隣に歩み寄ると、ナマエは慣れた動作で腕を組んだ。



「じゃ、また後でねナマエ!」

「ええ。」



バルコニーから場内へと戻れば、再びきらびやかな世界が俺を飲み込んだ。





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