04
吹雪士郎と別れた後、私の携帯にヒロトから連絡が入った。
彼の口から発せられたのは、私に希望を与える、最高の一言。
私は迷わず彼が指定した場所へと駆け出した。
『リュウジに会えるかもしれないよ?』
*
「ヒロト!」
「やあ、来たね。」
ヒロトは雷門の円堂守、鬼道有人と一緒にいたので、私は被っていた麦わら帽子を深くした。敵である雷門と行動を供にする。けど、そんなことどうでも良かった。
「オレの連れなんだ。和葉、こっちは円堂君と鬼道君。」
「…こんにちは、緑川、和葉です。」
「ああ!よろしくな、和葉!!」
リュウジと会える。それだけで、私の心臓は踊りだす。
頬の緩みが正せない…。
「実はね和葉、どうやらこの近辺で不審な男の目撃情報があったらしくて。」
「俺達は、その男がエイリア学園の関係者ではないかと踏んでいる。」
鬼道有人の言葉に、私は思わずヒロトのジャケットの裾を掴んだ。
「…不安ならここで待ってる?」
「、嫌!一緒に行く!!」
けど、こんなにも大きな期待を寄せておいて、もし違ったりなんかしたら、その時のショックは相当大きいんだろうなと思った。
「ごめんキャプテン!遅くなっちゃって…あれ?」
「ぁ、」
向こうから駆け足でやって来たのは、さっき別れたばかりの吹雪士郎だった。
「なんだ吹雪、和葉と知り合いか?」
「あゎ、さっき、ちょっと助けていただいて!!」
考えてみれば、彼も雷門の一員なのだから、円堂と一緒にいるのもなんら不思議ではない。
なんとなく気まずいななんて思ったけど、あっちはそんなこと全然気にしてはいないようだった。
「じゃあ、行こうか。」
私はまだヒロトの服を掴んだままだったことに気付き、とっさに手を離すと、彼らの一歩後ろを歩いた。
*
君とまた出会うのに、
そう時間はかからなかった。
けれど私にとっては、百年分とも言えるくらいに長く待ち遠しかったその瞬間。
ねえ……
寂しかったのは、私だけ…?
*
紅葉の葉が舞う、狭い裏通り。
「っ…!!」
名前を呼んで抱きしめたい衝動を、必死に抑えた。
「こいつは!!」
「お前、レーゼ!?」
嬉しくて嬉しくて、涙が出そうになった。
なのに…
「お前たちは…誰だ?」
「ぇ、」
何を言ってるの?
だって彼らは雷門イレブンで、ジェミニストームとだって何度も戦って…
「お前たち、我のことを知っているのか!?教えてくれ、我は一体…」
「レーゼ、お前まさか…!?」
リュウ、ジ…?
「…記憶を、消されたのか?」
鬼道君の言葉に、私は目の前が真っ暗になった。
「なんでだよ!?エイリア学園の奴等は仲間じゃないのか!?」
「敗者に用はないというわけか…。」
「ひどいことするね…。」
吹雪君は眉をひそめた。
「エイリア、学園…?」
誰か教えてほしい。
私は、何を恨めばいい…?
隣にいるヒロトを見ると、彼はなんの感情の揺れも見せない、人形のような顔でそこに立っていた。
彼と再び会えたことの感動で潤んだ瞳は、絶望のあまり乾いてしまった。
「、和葉ちゃん大丈夫?顔が真っ青だよ?」
「…ぅん、ありがとう吹雪君…平気。」
全然、平気なんかじゃ、ない。
涙さえ流れない
やっと会えた、全てを失った君の目に、私の笑顔は映らない。
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