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風介へ。


……手紙を書こうと思っても、今更何を書いていいか分かんないや。
というか、言いたいことがたくさんありすぎるんだよね。

だから大切なことだけ伝えます。



少しね、頭を冷やして、よく考えたの。

やっぱり私、さようならなんて言うべきじゃなかった。…でも、その可能性は、決して低いものじゃない。


だから私は、自分に風介を諦めさせるために言ってしまったのだと思う。
でもね、私、どうしてもまた"皆"と一緒に笑いたいし、サッカーがしたい。

風介にだって、また会いたいよ。

それに……。




…神様が本当にいるのなら、なんて、弱気な事は言わない。


必ず、戻って来るよ。


だからね、決意表明。

これを、預かっててほしい。
風介はもしかしたら、こんなものって、不快に思うかもしれない。けれど、私にとってこれが、一番強い想いが籠もってる、大切にしてたものなの。


……この約束は、今度こそ守ってみせるから。

絶対に、また会おうね?


そしたら、和葉、って、私の名前を呼んでほしい。








*






「おいガゼル」



待機用に用意された大部屋には、俺達プロミネンスとダイヤモンドダストのメンバーがいた。

施設の中心部のフィールドでは、雷門とジェネシスが戦っている真っ最中だ。
参加を許されていない俺達は、ただ時が過ぎるのを待っていた。



「…なんだチューリップ。」

「チュ…!?…まあこの際見逃してやる。」



テーブルの端で、手に何かを握っているガゼルの顔は、人一倍に不安の色を滲ませていた。



「だから何だと言っている!!」



理由は明らか。エリオがいねぇ。
探しに行こうとしねぇところを見ると、何か訳アリなんだろう。



「大声出すんじゃねーよ、テメーばっか不安がってっと思うんじゃねえ!」

「……っ、」

「さっきから見てればなんだよ…震えてんじゃねえか。」

「!!!?」



そう、俺が気にしてたのはそれだ。

自分では気付いていなかったのか、指摘されて、ガゼルは酷く困惑したみてーだった。



「こんな時こそ、チームキャプテンの俺達がしっかりしてねーと駄目なんじゃねーのか!?」

「……。」



ガゼルは強く唇を噛みしめ、何かを収めている拳を握った。

そして一息つくと、ゆっくりと瞬きをして、



「…そうだな、悪かった。」



さっきと比べれば、随分と落ち着いたように見えた。







…そんな矢先の出来事だった。




「君達!!」




勢い良く扉を開けて入って来たのは、見覚えのない顔をした大人だった。



「すぐにここを出るんだ!」

「はぁ?テメー何言って…」

「この基地は崩壊する!!今警部から連絡があって、じきにここにも揺れが到達するっ!!」



つーことは何だ?


ジェネシスは…負けた、のか?



「ふ、ざけんなっ!!見ず知らずの奴の言うことなんざ信じられ、」



ガゼルに落ち着けだの言っておいて、俺はその男の言葉に戸惑った。

動揺している俺を静めるように、肩に誰かの手が乗った。



「ヒート…」

「…行こう、晴矢。」



ヒートの目には、少しの苦渋が滲んでいた。そのくせ、これでよかったんだと、その青色が言っている。


横目でガゼルを見れば、ガゼルもリオーネ達と何か話しているようだった。



「…晴矢、」



ホント、何年かぶりにガゼルが俺の名前を呼んだ。



俺は全員へと体を向け、



「…お前等よく聞け!今からここを脱出する!!」










*










外に出て、私はすぐに和葉を探した。

しかし、辺りを見回してもそこ和葉の姿は無く、かわりに随分と懐かしい顔が見えた。


隣にいた晴矢も、目を見開いた。





「イプシロン、それに…」

「…ジェミニストーム。」




いや、正確には"元"か。



どうやら奴等も星の使途内部にいたらしく、私達と同じように、警察の手によって脱出して来たのだろう。




私は手の中にある物を、確認するかのように強く握りしめた。




少し離れた場所に、グランや雷門イレブンの姿も見えた。





そして、一際大きな爆発音が響いた。


地面が揺れ、私達はまともに立っていることも出来なかった。
























その爆発から、私は目が離せなかった。



紅い焔、黒い煙に、私達の数年間が、呑み込まれて行く様に見惚れているわけではない、

そんなことじゃないんだ。





「…和葉」







また、怖くなった。



君を失うことが。






だって、嫌な音がしたんだ。










恐る恐る手の平を開けば、

君に預かった髪飾りの花に、小さな亀裂が入っていた。










約束、したじゃないか。


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