うっわ何これマジ微妙。

たった今、目の前の人物に手渡された白いユニフォームを見て、私は苦い顔をしていた。



「どうした名前、そんな顔をして。お前がキャプテンではないことを悔やんでも仕方ないだろう。」


左肩にこれ見よがしにオレンジのキャプテンマークを着けた白髪頭は、そう言って私を鼻で笑った。


「別にキャプテンなんかなりたくねーっての。」

「フッ、図星か。」

「うぜぇこいつ!!」


残念なイケメンとかいう生物って本当にいるんだ、都市伝説か何かだと思ってた。


「白嫌だ、お前を彷彿とさせる。」

「彷彿させようがさせまいがこれから毎日顔を合わせることになるんだ、光栄に思え。」


極秘プロジェクトメンバーに選ばれたのは嬉しいけど、どうして私がこいつと一緒のチームなんだよ。


「嫌っつてんのに光栄に思えるわけないでしょうが。」

「ところで聞いたか?」

「何を。」


ナチュラルに話を逸らされたが、こいつにこっちの意見を認めさせることは無理難題なので潔く諦めることにする。


「今日、また新しいのが何人か来るそうだ。」

「見に行くの?」

「ああ。どれも剣城の代わりになるとは思えないが、それなりの見込みはあるらしいからな。」

「出たよツルギ病。誰だよツルギって。…で、テスト見に行くからチームの練習は任せたと?」

「いや、それは既に青銅に任せた。」


じゃあもうユニフォーム渡したから用無しじゃん。というか青銅実はあんたより歳上だから、一歩ゴッドエデン出たら青銅"さん"だから。


「つーかさっさと出ていってよ、いつまでも女子の部屋に居座るんじゃない。」

「…分からないのか?」

「分かるか。」


いつから私はお前とアイコンタクトが出来るようになったんだ。

そう思っていると、白竜は私の返事に対し呆れたように片手で額を押さえた。
…何で私が可哀想なかんじになってるんだ。お前だから、残念でイタいのお前の方だから。


「誘っているんだ。」

「断るわそんなもの!!」


なんだその顔は。すっごい驚いてるんですけど。


「何故だ!?」

「分かんないけど嫌だ。」

「…泣くぞ。」


嘘はいけないよ白竜さん。そんなに堂々とした態度で仁王立ちしてるくせに。


「勝手に泣いてなさいよ……ぇ、嘘、ちょ、放して!!」


そのまま私は白竜にずるずると引き摺られる形で、新入りの品定めへと向かったのだった。




*




「何だ、あいつは。」


白竜が指しているのは、今しがたシュートを撃った男の子のことだった。
二つの翠玉で飾った独特の前髪に、民族衣装にも似た黒い服。


「こっちが聞きたいよ。あんな特徴的な髪、リストにいなかった。」


それとも何だ、もしかして書類用の写真撮ってからイメチェンしたのか。


変な触覚にも見える前髪をした彼は他の人間よりも強力な、いや、白竜と同等のシュートを放ってみせた。


「…面白い。」


横目で隣を見れば、白竜はそう言って小さく笑っていた。
どうやら競い相手を見付けて喜んでいるらしい。

ああ、よかった。これで私達の負担が減る。後で青銅達にも教えてやろう。


でも、なんだろうかこの感じは。

実はこっそり霊感を持ってたりする私は、変な違和感を感じて自らの腕をさすった。


「白竜、あいつ変な感じがするよ。」

「ふん、自分を越えた存在に恐れをなしただけだろう。」

「ホっント安定して周りが見えないなお前は!薄ら霊感のある私が変な感じするって言ってんだぞ!?」

「そんなものはお前の過剰意識だ、きちんと目の前の現実を見ろ。」

「お前がな!!」


畜生、お前なんかそこらの怨霊に呪われちまえ!!


「霊なんて…いたとしてもゴッドエデンに出るわけがないだろう。」


それでも私が白竜を睨み返すと、白竜は可哀想な奴を見るような目で「悔しかったら俺を倒してみるがいい。」だなんて言ってきやがった。

畜生、今に見てろ。

すぐにでもお前を越えて、私が"究極"になって、お前を見下してやる。そんでもって、格の違いを思い知ったか、この三流シードがぁっ!!とか言って高笑いしてやる。
化身どころか卍解すんぞ卍解、今はまだ何もできないけど。


「名前、全て声に出ている。」

「マジで?ごめん嘘。」

「フン、精々頑張るんだな。」



黙りやがれ。







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