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翌日の昼、俺は壁に背を預けて、携帯から浮き上がる立体ディスプレイ上で指を動かしていた。
隣に立っているミストレといえば、廊下を行き交う他の生徒達を凝視している。
「お前さ、何か睨んでるみてーで怖ぇよ。」
「……。」
まあ事実機嫌は悪いらしい。
それと言うのが、昨日言ってた女がどうにも見つからないからだ。別にいいじゃねーかとは思うが、ミストレは一度決めた事は絶対に曲げない性格だ。それに、俺にはよく分かんねえけど、その女の態度がコイツにとっては相当な屈辱だったらしい。
「…どうして見つかんないんだろ。」
「さあな。」
俺たちと同じ場所の掲示板を見に来ていたらしいから、学年が違うということはまず無い。
…あ、そういや大分前からフランに音楽データ貸したままだな、後で返せって言わねえと。
「…未だに信じらんない。女の子に邪険扱いされたのなんて、生まれて初めてだよ。」
「そーかよ、随分といいご身分だったんだな。」
「エスカバには分からないだろうね。」
「悪かったな。」
嫌味なため息をつくと、ミストレは姿勢を変え、頬をついてエントランスホールを見下ろせる窓を見た。
「あ、見てエスカバ。ザゴメルが女の子と一緒に歩いてるよ?」
関心したように目を開くミストレは、多分自分を棚に上げて話しているんだろう。
「別にザゴメルが女連れてたっていいだろうがよ。」
というか、ザゴメルと一緒にいる女とか、フラン位しかいねえだろ。
…今何気俺もかなり失礼だったな、悪ぃ。
「ああっ!!」
「っ何だよ!?急に叫ぶな!!」
思わず肩が跳ねたわ。
「いた!!」
ミストレはガラスに手を当て、食い入るように下の階を見下ろしていた。いたというのは、おそらく探していた女子生徒のことだろう。
「どいつだよ?」
「あの子!」
ミストレの指す先を見ると、そこにいたのは、
「は?……フラン??」
「知ってたの!?」
「同じクラスの奴だぜ?……ん?でもあいつ、お前のこと知らねーって言ってたけど…。」
「嘘!?」
ミストレは驚愕で目を開いていた。
「王牙学園の女子生徒なのに!?オレを知らないなんてあり得ない!!」
ああ、知らないってか、名前と顔が合致しなかったんだろうな。
俺の反応を待たずに、ミストレは廊下を駆け出した。
行き先は…まあ当然フランの所だろうな。同行する必要は無かったが、俺は携帯を閉じてミストレの後を追った。
ズバリ発見
見つけた、見つかった。
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