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さっき女の子を助けた。
さっきというか、ほんの数十秒前。
「……信じられない。」
そう呟けば、オレと同じように掲示板を見に来たらしいエスカバが、オレに声をかけた。
「ミストレ、んなとこでつったってどーしたんだよ」
「エスカバ…君今の見た?」
「は?見たって…何をだよ。」
この様子だと、どうやら分からないらしい。
「今さ、女の子が転んじゃいそうだったから、助けてあげたワケ。こう…胸板に顔ぽふってさせて、両肩押さえてあげて。」
「へえ。女子に対しては相変わらずいい奴だなお前。」
わざわざ動作付きで説明してやったが、エスカバの返事にはなんだか皮肉が混ざっていた。…まあ、とりあえずそれはどうでもいい。
「"このオレ"が抱き支えてあげた上微笑みかけたんだよ!?なのにその子、顔色一つ変えなかったんだ!周りにいた子は顔真っ赤にして悲鳴上げてたのに!!」
「…あっそ。」
「時間も時間だし、昼食に誘ってくれてもいいとは思わない?」
「さあな、照れてたんじゃねーの?」
「ならあんなこと言わない。」
「あんなこと?」
「一旦引き止めて、オレがなんでもないって言ったら、明らかにウソの笑顔浮かべてじゃあ引き留めるなだって。まあそれはさすがにあっちも失言だって気付いたみたいだったけど。」
「マジで?ははっ!!お前にそんなこと言う女いるんだな!」
心底面白がって笑っているエスカバの顔に一発お見舞いしてやりたかったが、なんとか我慢した。
「…4番か。ミストレーネ・カルスは今回もバダップに次いで2番だとよ。」
「今はどうでもいいよ。」
それに、バダップのことはあの件以来認めている。
「んで、そいつどんなんだか覚えるか?」
「当然、瞬時に記録したよ。見惚れてくれないなんて心外だったからね。もう一度会って、事の真相を確かめる。」
「へえ。ま、頑張れよ。」
目ぇ付けられた
絶対に見つけだす。
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