「ミストレさん?ああ、お姉ちゃんの彼氏だよ!」
「ぶっフォ!!」
「ちょ、お姉ちゃん汚いから!!」
久々の父親と妹と三人の夕食。そして再び彼の口からでた同じ質問。
先程私が上手く誤魔化したというのにこいつは!!
「ほー…。彼氏、ねぇ。」
ちまちまと皿に散らばったもやし類を箸でかき集めながら、おと…お父さんは呟いた。
「だから違うって!彼氏じゃない!!」
そう、所詮この関係は偽物…擬似彼氏?なんか違うな。
「うっそだぁ!最近送り迎えしてもらってるじゃん!!」
「それはそうだけど…。」
「はぁ?フラン、お前一人で学校にも行けないのか!?」
「行けるわ!!誰が極度の寂しがりだ!!」
「んなこと誰も言ってねーだろ。」
「おねぇちゃーん、ミストレさんはお姉ちゃんのことカノジョって言ってたのに、ミストレさんはお姉ちゃんのカレシじゃないの?」
「あのね、あいつに彼女なんて概念は存在しないよ。自分がモテるのを当然のことと思い続けってるから、一人の女子を特別扱いしたり、その子に固執したりなんてしないの!!私も来週の月曜には捨てられる予定なの!!」
「えー?なにそれぇ。」
けらけら笑ってるけどさ、冗談じゃないからね?
ホントの話だからね?
そういや私の目の前に座るこの二人も、生まれてこの方モテ続けている人間なんじゃないの?
え、なにそれ憎たらしい。
「あたし、ミストレさんがお兄さんになってくれたら嬉しいなぁ!」
何、つまり結婚しろと?
無理無理、いろんな意味で無理。この子ホント何言っちゃってんの!?
「まあ人生いろいろあっから、俺はとやかく言うつもりはないけど。とりあえず節度うんちゃらは守ってくれよな?」
「あんたじゃあるまいし!!」
「え、でもこないだミストレさん止まった時、お姉ちゃん一緒のベッドで寝たんじゃなかったの?」
「なに?は??今なんつった??一緒のベッド??」
はい爆弾二投目投下ー!!
ほんっとこの子ったらもう!!!!
「い、い、いたたたたたた。ワタシ急ニお腹痛くナッテシマタカラもう寝るネ、バイバーイ!!」
まだ夕飯食べ終わってないけど仕方ない、食器も洗わなきゃいけないけど仕方ない、私は退散させていただこうではないか。
そう思ってリビングを出ようとしたその時。
「待ちなさいフラン?」
「っ!!」
声の調子は穏やかだが、背中に降り掛かって来たのはとてつもない殺気。
しかもまだ授業でしか体験したことのない、本物のそれ。
「座れ。」
「はい……。」
痛い痛い、殺気が肌にピリピリする。
つかそれ、実の娘に向けるか普通!?
家族三人
御説教終了時刻は午前零時ちょっと過ぎでした。
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