「やあフラン、たかが飲み物買いに行くだけだっていうのに、随分遅かったじゃないか。」

「ご、ごめんなさい。」



ホールのプチ騒動の後、私は本来の目的を思い出し、ダッシュでミストレの教室へと戻って来たのだが。
やはりというかなんというか、ミストレの機嫌は最悪だった。



「ちょっと、ね?不良に絡まれまして。」



何言ってんだ私、王牙に"不良"とかいるわけないだろうが!あーもーほら、ミストレ睨んでるよ!嘘だってバレてるよ!?じゃあどう言い訳すればいいんだ、ちょっと誰か教えてくれ。



「あの、実は…。」



オトン、どうやら私は危機回避能力が乏しいようです。



「……はぁ、知ってるよ。」

「え?」

「携帯、通話になってない?」

「え、あ、ああ!」



画面に表示された"通信が切断されました"の文字に、私は更なる混乱を起こした。



「ぃ、一体いつから…。」

「さあね?だから、君の声がずっと聞こえてたんだ。」



なんと。

それにしてもわざわざミストレに繋がらなくても……いや、これは逆に助かったのかも。



「良かったね。」



私が席につくと、ミストレは窓の外を見て呟いた。

サイドの髪で顔が隠れ、ミストレが今どんな表情をしているのか分からなかった。



「ごめんね?駆け付けてあげられなくて。」

「そんな、いいよ別に。」



ごめん、そう言ってくれるのは嬉しいけど、元々の元凶は貴方なんですよミストレさん。



買って来たフルーツジュースを机の上に置くと、ミストレはそれに手を伸ばした。



「……フランなんで君、そんなに嬉しそうなの?」



私の顔を見たミストレは、訝しげにそう尋ねた。



「え、私、笑ってた?」

「少しね。あと、雰囲気が柔らかいなぁって。」



なんだろ。そんなことに気付くなんて、やっぱり普段から女の子の近くにいると分かるようになるのかな。



「…さっき、クラスの女の子が助けてくれて。」

「うん、知ってる。」

「最初に相手にかかっていった子、私実はあんまり話したことなくて…。気の強い子でさ。ちょっと怖いとか思ってた部分もあったんだけど、クラスメイトってだけの関係だと、思ってたんだよね。」

「その子が自分を庇ってくれたことが嬉しかったの?」

「ううん、違うよ。その後にね、他の子達も駆け寄って来てくれてさ。それで、ありがとうってお礼言ったらさ。」

「?」

「あたしら皆仲間でしょ、当然。……だって。」



思い出して、また嬉しくなって、笑った。



「仲間、って、言ってくれたんだよ。」



口元がにやついているのが分かる。



「…馬鹿じゃないの?」



ミストレが呆れたようにため息を吐いた。



「ほら、早くお弁当食べちゃお?」

「あ、ぅ、うん!」



げ、こんなに時間経ってたのか。




あれ、そういえば……。



「ミストレって、あんまり男の子と一緒にいるの、見たことない。」

「…何でオレがオレより格下のムサい男連中と仲良くしなくちゃなんないわけ?」



格下のムサい男連中って、アンタちょっと。

つか、やっぱ女子は例外なんですか。



「じゃあミストレはバダップさん以外とは仲良くしないの?」

「そうじゃない!」



びしっ!ミストレの箸が私の眼前で静止する。

うわ、危ないよ!



「あーもう、言葉のあやだよ!調子狂うなあ。」



机に肘をつき、片手で頭を押さえるミストレ。



「……。」



…なんだこいつ、いつもは余裕しゃくしゃくのくせに。ちょっと面白いぞ。



「ミストレさん、ひょっとしてお友達少ない?」

「そうとは言ってないだろ!?」



あ、これは怒ってるんじゃないな、ひょっとしてテンパってます?



「ははっ、分かったよ。」

「分かってないでしょフラン、君誤解してるから。オレにだって男の友人ぐらいいる!」

「ちょ、顔近い。」



ミストレは机に身を乗り出して否定している。鼻がぶつかりそうな距離だけど、色気というか、そんな感じは一切無しだ。多分、本当に何人かはいるんだろう。



「男友達って、やっぱエスカバ君?」

「なんでエスカバ限定なのさ。他にもちゃんといるから。」



私が真実を受け入れたと見たのか、ミストレは椅子に座り直して弁当をつついた。



「……なんだかなぁ。」

「今度は何?」

「別に、なんでもない。」



今までミストレのこと、完璧でナルシでプレイボーイだとしか思ってなかったけど、今のでちょっとイメージアップしたかもな。
まあタイミング的に、私の心が弾んでたからかもしんないけど。
恋人は断固として拒否だけど(親衛隊怖い)、友人ぐらいにはなってやってもいいかなとか、思い始めた。



「あ、これ冷凍食品でしょ?」

「…よく分かったね。」

「昨日手抜いたら許さないって言ったよね?」

「……許して下さい。」

「言ったよね?」

「………すいませんでした。」



テンション、ガタ落ち。






*






「…あれ、ザゴメル君。」

「ん?」

「エスカバ君は?」

「…保健室じゃないのか?」



次の授業、何故かエスカバ君は時間ギリギリになって教室にやって来た。

手には最新型の手錠が握られていて、うわ、普段からあーゆーの持ってるとかエスカバ君いろんな意味で危なっ!?とか思った。






ふれんど

ミストレの野郎、放置とかマジ考えらんねぇ


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